ここは売場の陳列台の前。目の前に段ボールに入ったキャベツがあるとします。あなたはそれを取り出して陳列台に積んでいく。そして値札をつける。これで売場ができるはずもないし、仕事にやりがいを感じられるはずもない。
いったい、そのキャベツは誰が、どのようにつくり、どのような栄養とおいしさを持つのか。そうしたことを知ろうともせず、無造作に積み上げるあなたの仕事に価値などあるはずがない。
一方、ある人は産地を知り、つくる人を知り、その思いを知ろうと努める。そして、その価値が伝わるように、お客様に見えやすく、手にとりやすく、それが本来を持つ価値が生きるように商品を売場に整えていく。そして、その価値がお客様に伝わり、お客様の暮らしが彩られ、体と心を整えることに貢献することを知っていれば、その仕事に誇りを持つことができる。
傍から眺めているだけでは、どちらも同じような絵づらだし、そこに違いなどないと思うかもしれない。しかし、本当の商人にとって、前者は作業に過ぎず、後者こそ本当の仕事であることは一目瞭然だ。
同じ時間を使うのなら、あなたはどちらをしたいと思うだろうか。商売は単純作業の積み重ねだ。しかし、その意味を知ろうと努めれば、そこには必ず気づきや悟りがある。
以前のブログで小売業の人材不足は、①きつくて、②儲からないし、③やりがいがない、ところに理由があることを紹介した。仕事を本気でやればきついのは当然だし、それを乗り越えるところに喜びがある。儲からないのは、従来のやり方に安住するだけで、世の流れ、人の動きを見ようとしないからだ。そして、やりがいがないのは、そこに志や思想がないからだ。
食の商業家、福島徹さんの話を聞き、売場でキャベツを眺め、今日はそんなことを思いました。