笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

従業員の退職や採用難、人件費高騰などに起因する「人手不足倒産」は企業信用調査会社、帝国データバンクによると2023年度に313件発生し、過去最多を更新しました。特に直近3月は49件にのぼり、月次ベースで最も多い件数となっています。

 

 

この4月は、時間外労働の新たな上限規制が適用されることで、人手不足による機能不全が懸念される「2024年問題」に注目が集まっています。その対象業種である建設業は94件、物流業は46件とそれぞれ過去最多となり、すでに事態は深刻。社会インフラとして欠かせない両業種は、人材募集や生産性向上など早急な対策を迫られています。

 

従業員数別では「10人未満」が74.1%(232件)と断トツ、業歴別では「30年以上」が38%(119件)。社歴の長い零細企業に人手不足倒産が集中していることがわかります。また建設業、物流業は資材・エネルギーなどのコスト高騰に直面している一方、価格転嫁率は全業種平均を下回っていることも倒産を増やした要因と言えるでしょう。

 

小売・卸売業、飲食業・サービス業も無縁ではありません。労働者派遣事業会社のパーソルホールディングスのシンクタンク、パーソル総合研究所は「労働市場の未来推計 2030」と題した2030年時点での人手不足の状況を推計しています。この推計によると、卸売・小売業界では2030年に約60万人の人材不足が出るのではないかと予測されています。

 

では、なぜ人材が不足するのでしょうか。やはりシンクタンクの三井物産戦略研究所は、小売業の求人が満たされない主な理由として、肉体的・精神的ストレスが多い「労働環境」、小売業の低利益構造に由来する「低賃金」、さらに「小売業に従事することへのやりがいや将来性の欠如」を挙げています。①きつくて、②儲からないし、③やりがいがない、これが小売業不人気の理由です。

 

 

「いや、小売業はそういうものだから」と諦めたら、あなたの店に未来はありません。従業員とは、あなたの事業の道具ではなく大切な家族のような存在であり、財務諸表上の販管費やコストではなく価値創造の担い手なのですから。

 

大切な家族なら、彼ら彼女たちとコミュニケーションをとり、もっと知ろうと努めるのは当然のこと。

 

たとえば、北海道帯広市の菓子の名店、六改定には「1人1日1情報」という社内制度があります。すべての社員、パートナーが仕事の改善・提案やお客様からのご意見、その日の出来事などを自由に発信できる制度です。翌朝にはトップがすべてに目を通し、日刊新聞「六輪」にそのまま掲載されて記事になります。改善の取り組みやスタンダードの基準が職場をこえて広がり、商品開発のヒントになったりと有効に活用されています。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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