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Amazonが楽天を抜く日

日本のEC市場において、長らく「王者」として君臨してきたのは楽天市場でした。全国の商人が集まり、それぞれの店が工夫を凝らし、顧客との関係を築く。楽天はまさに「デジタル上の商店街」として、日本の商業文化を体現してきた存在です。

 

しかし今、その背後から、静かに、しかし確実に迫っている存在があります。Amazonです。楽天市場の流通総額は約6.3兆円。一方、Amazon日本事業の流通総額は推計で約6兆円とされ、その差はわずかです。それらの成長率をみると、逆転は時間の問題といってよい段階に入りました。

 

しかし、この競争の本質は、単なる「数字の大小」ではありません。そこには商いのあり方そのものを変える構造的な違いがあります。

 

Amazonは店ではなくインフラ

 

かつてAmazonは「ネット上の本屋」として誕生しました。本を売る一店舗に過ぎませんでしたが、現在のAmazonは「店」ではありません。流通そのものを支配する「インフラ」へと進化しています。

 

その象徴が物流です。Amazonは、自ら巨大な物流網を築きました。倉庫を持ち、配送網を持ち、翌日配送、当日配送を実現しました。顧客は、どの店が売っているかを意識することなく、「Amazonで買えばすぐ届く」と信じて注文します。

 

ここで起きている変化は決定的です。顧客は「どの店で買うか」ではなく、「どこで買えば確実に届くか」で選ぶようになったのです。これは、店の競争ではありません。仕組みの競争です。

 

楽天は、あくまで「店の集合体」です。配送もサービスも店舗ごとに異なります。それは商人の個性であり、魅力でもあります。しかし同時に、顧客にとっては不確実性でもあります。

 

一方、Amazonは不確実性を徹底的に排除しました。誰から買っても、同じ体験ができる。その「安心」こそが顧客を引き寄せているのです。

 

 

Amazonと楽天の本質的な違い

 

さらに重要なのは、Amazonの流通の多くがAmazon自身ではなく、出店者によって生み出されているという点です。Amazonは、商品をすべて自分で売っているわけではありません。無数の事業者がAmazonに出店し、販売しています。しかし顧客は、その商品を「Amazonから買った」と認識します。

 

なぜなら、検索も、表示も、配送も、決済も、すべてAmazonの仕組みの中で完結するからです。つまりAmazonは「売る会社」ではなく、「売れる仕組みをつくる会社」になったのです。

 

これは商業史における歴史的大転換です。従来の商人は、自ら売ることで成長しました。しかしAmazonは「他者を売らせることで」成長しているのです。ここに、拡大の限界がない理由があります。

 

一方で、楽天が築いてきた世界にはAmazonにはない価値があります。楽天では、店の名前が見えます。店主の顔が見えます。そこには、それぞれの店の物語があります。顧客は商品だけでなく、「この店から買う」という選択をします。それは効率ではなく、関係に基づいた商いです。

 

Amazonが「無機質な効率の世界」だとすれば、楽天は「人のぬくもりが残る世界」です。この違いは、優劣ではありません。思想の違いです。

 

 

Amazonが楽天を抜く日

 

おそらく近い将来、Amazonは楽天を流通総額で抜くでしょう。それは物流、検索、AIという巨大な仕組みの力によってほぼ必然的に起きる流れです。

 

しかし、そのとき問われるのは楽天の敗北ではありません。問われるのは、私たち商人の存在理由です。もし商人の役割が単に「商品を届けること」であるならば、その役割はAmazonに置き換えられていくでしょう。Amazonは人よりも速く、正確に、確実に届けるからです。

 

しかし、商人の役割が「商品を通して人と人をつなぐこと」であるならば、その役割は決して消えることはありません。顧客は、便利さだけで店を選んでいるのではありません。信頼できる人から買いたい。応援したい人から買いたい。あの店があるから、このまちはいいと思いたい。そうした感情は仕組みでは生み出せないのです。

 

Amazonが楽天を抜く日は、単なる順位の逆転ではありません。それは「効率の商い」と「関係の商い」の境界線が改めて浮き彫りになる日です。そして私たち商人にとって本当に大切なのは、Amazonに勝つことではありません。Amazonがどれほど成長してもなお「あの人から買いたい」と思われる存在であり続けることです。

 

商いの未来は、仕組みの中にあるのではありません。人の中にあります。どんな時代になっても、最後に選ばれるのは商品ではなく、商人だからです。

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