ある病院でのこと。胸の計器が外れているのに気づいた看護師が、何も言わずに患者の体をさわったところ、足蹴りされてしまいました。その患者はおそらく、いきなりさわられたことが怖かったのでしょう。
ところが、退院時にかかりつけ医に渡す情報提供書には、「この患者には暴力行為がある」と書かれていたそうです。患者からすれば、自分の体に突然さわる看護師のほうがよっぽど暴力的だったはずです。
ここに欠けているのは「信頼」です。患者は、信頼のもとで看護師に「ふれて」ほしかったのです。けれども、看護師が一方的に「さわった」ので、そのことに抵抗したにすぎません。
このように、「ふれる」と「さわる」は似て非なるものです。さわるは、相手との感情的な交流を考慮しない一方的で、物理的なかかわりですをいいます。ふれるは、相手の事情をおもいやり、感情を尊重する相互的で人間的なかかわりです。
「接客」というとき、あなたはお客様にどちら心と態度で接しているのでしょうか。おもいやりや尊重の心をなくしたとき、私たちはお客様を無遠慮にさわっています。お客様があなたに求めているのはあくまでふれあいなのです。