笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

私たちは誰を相手に商売をしているのでしょうか? 答えは「人」。これは全世界のどの事業者も当てはまる真理です。そして日本で商う多くの事業者にとって、人とは「日本で暮らす人」のことです。

 

その数が減り、その年代分布などが変わっています。そして、そうした傾向は地域によって異なり、全国一律ではありません。これらはすべて国勢調査が教えてくれます。ここでは、2021年11月に公表された最新データ「2020年(令和2年)国勢調査」速報から気になる傾向を見てみましょう。

 

人口減少

 

ご存じのとおり、日本の人口は減少に転じています。2020年10月1日現在における人口は1億2614万6000人。2015年と比べると、人口は94万9000人の減少(2015年から0.7%減、年平均0.15%減)です。

 

 

都道府県別に見ると、東京都、沖縄県、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、滋賀県の8都県が増加しており、残りの39道府県は減少に転じています。ワースト5は秋田県、岩手県、青森県、高知県、山形県と、東北地方の多くの県が並んでいます。

 

 

市町村別に見ると、ベスト5は東京23区(東京都)、福岡市(福岡県)、川崎市(神奈川県)、大阪市(大阪府)、さいたま市(埼玉県)、ワースト5は北九州市(福岡県)、新潟市(新潟県)、長崎市(長崎県)、横須賀市(神奈川県)、いわき市(福島県)。福岡県を代表する二つの政令指定都市が明暗を分けています。

 

 

諸外国との比較はどうでしょうか。世界銀行が発表している国や地域別の人口増加率を見ると、数値がマイナスの地域、つまり人口が減少している地域は次の20カ所(数値はいずれも2017年時点)。

 

①プエルトリコ(-2.4)

②リトアニア(-1.4)

③ナウル(-1.3)

④クロアチア(-1.2)

⑤ラトビア(-0.9)

⑤シリアアラブ共和国(-0.9)

⑥ブルガリア(-0.7)

⑦ルーマニア(-0.6)

⑧セルビア(-0.5)

⑨アンドラ(-0.4)

⑨ウクライナ(-0.4)

⑩ボスニア・ヘルツェゴビナ(-0.3)

⑩ハンガリー(-0.3)

⑪ポルトガル(-0.2)

⑪アメリカ領ヴァージン諸島(-0.2)

⑪ギリシャ(-0.2)

⑫日本(-0.2)

⑫イタリア(-0.1)

⑫アルバニア(-0.1)

⑫モルドバ(-0.1)

 

経済先進国に新興国を加えた主要20カ国、いわゆる「G20」でのランクインは日本とイタリアのみ。つまり日本は人口減少という、他の経済先進国とは異なる未知の領域を進んでいるのです。

 

そんな中で、私たちは商い、働いて生きています。私たちはいま、未知の世界に向かって新たな道を切り拓いていかなければなりません。それはとてもやりがいに満ちた営みではないでしょうか。

 

単独世帯化

 

次は視点を「世帯」に転じてみましょう。社会の最小単位である世帯も減少しています。2020年の1世帯当たり人員は2.21人となり、2015年に引き続き減少。今世紀に入ってからおよそ1/2人減っています。

 

 

また、都道府県別の一般世帯の1世帯当たり人数は全ての都道府県で減少していますが、山形県が2.61人と最も多く、東京都が1.92人と最も少なくなっています。人口減少ワースト5位の山形県と人口増加ベスト1位の東京都の対比に、都市部の単独世帯化が見られます。

 

諸外国との比較はどうでしょうか。「THE BIG ISSUE ONLINE」によると、国連経済社会局人口部の元ディレクターで人口統計学者のジョゼフ・チャミー氏は「世界に20億ある世帯のうち約15%にあたる3億世帯が単独世帯」と指摘しています。

 

単独世帯率が最も高いのはヨーロッパで、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ノルウェーで40%超、スウェーデン38%、オーストリアとスイスが37%、オランダ36%、フランス35%、イタリア33%と続きます。ヨーロッパ以外では、日本が32%、アメリカとカナダが28%、韓国27%、オーストラリアとニュージーランドが24%。先進国の中で目立って低いのはロシアの19%のみといいます。

 

日本の場合は、これに高齢化が加わります。つまり、日本の単独世帯の多くが高齢化していくということです。国の推定によると、2050年には単独世帯の半数以上を高齢者が占める時代を迎えます。その数は1000万世帯以上。つまり、全世帯の約4分の1が単独高齢者世帯という時代が目前に迫っています。

 

少子高齢化

 

総人口に占める65歳以上人口(老年人口)の割合、いわゆる「高齢化率」は26.6%から28.6%に上昇しています。一方、15歳未満人口(年少人口)は1503万2000人(総人口の11.9%)、生産活動の中心(15~64歳)にいる人口層「生産年齢人口」は7508万8000人(59.5%)と、ともに減少しています。

 

 

諸外国との比較はどうでしょうか。15歳未満人口の割合は世界で最も低く、65歳以上人口の割合は世界で最も高いのが日本なのです。総人口に占める15歳未満人口の割合は韓国(12.5%)およびイタリア(13.0%)よりも低く、世界で最も低い水準。65歳以上人口の割合はイタリア(23.3%)およびドイツ(21.7%)よりも高く、世界で最も高い水準となっています。

 

 

このように諸外国と比べても、日本の少子高齢化は特異であることがわかります。こうした環境下で私たちは商いをしているのです。このとき、これまでの成功法則はやはり通用しません。自らの商いと仕事を社会環境の変化に合わせて革新させなければ、未来は閉ざされるでしょう。

 

しかし、心配はいりません。あなたの目の前にいらっしゃるお客様にしっかりと向き合ってください。彼ら、彼女たちが持つ不満、不便、不都合、不足といった“不”の感情を明らかにし、その解決策を提示すればいいのです。

 

そうした“不”に、お客様自身は気づいていないかもしれません。先んじて解消策を提案したとき、お客様は言うでしょう。「そうそう、こんなのが欲しかったんだ!」と。こうした“不”の発見と解消こそ、あなたが商いをする目的です。

 

だから、あなたは大切にすべきお客様を見つめ、その声を聞きましょう。そこに必ずあなたが商い、働く理由があるはずです。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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