石川県金沢市の「芝寿し」は、持ち帰り寿司・弁当の製造販売を行う地元きっての名店。1958年創業以来、地域の生活者の信頼を得ながら北陸三県でのれんを育ててきました。
代表商品は、2枚の笹で押し寿司を包んだ「笹寿し」。石川県白山市にある大社、白山比咩神社の参道で販売されていた笹餅をヒントに考案されたものです。笹の香りと上質な素材の味わいが北陸人の舌をとらえ、同社の発展のきっかけをつくりました。
その商いの詳細は、拙著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』をご覧ください。ここでは、創業者である故・梶谷忠司が遺した商売の素晴らしさを伝える20項目を紹介します。
01.商業を通じて人間社会の喜びを増大しうる
02.地域発展の原動力となりうる
03.社会的に不可欠な商業とすることができる
04.正確なビジネス、明るいサービスで社会に役立つ
05.商業を通じて文化的な仕事をなしうる
06.地域のリーダーとなって社会に貢献できる
07.常に創造し芸術する喜びすらある
08.生活と文化の情報源として考えられる
09.誠実と努力をつくすことにより必ず成果が上がる
10.商業は自分の考えを主張することができる
11.企業の発展によって人々に就業の機会を与える
12.企業を通じて社員に幸福を与えられる
13.商人は利益を得ながら感謝される
14.協業することにより大規模店を経営することも可能
15.経営者の勤務時間には自由がある
16.異業種の営業をすることもできる
17.全国的な名店とすることさえできる
18.計画的に規模を拡大することができる
19.長所を持つことにより社会から支持される
20.商売のおかげで広く海外を知ることができる
現在は北陸だけで年間1100万個以上を製造、当地のソウルフードの一つに数えられる笹寿しも、発売当初から人気を得たわけではありません。考案者である忠司さんと、販売責任者の商品に対する熱意には温度差がありました。
毎日販売残数を報告し、採算性を考えて生産を抑えるよう説得する担当者を、「会社を辞めてまえ!」と、忠司さんは叱りつけたことがありました。「価値あるものなら、必ずお客様に受け入れられる。もし受け入れられないならば、それは価値の伝え方が足りないからだ。こちらの姿勢に一歩引いたところがあれば、お客様の心など動かせるものではない」と、忠司さんは笹寿しの将来性を確信していたのです。
そこで365日分の笹寿しの広告をつくり、地元紙に毎日掲載し続けました。結果、爆発的なヒット商品となり、それを原動力に芝寿しは石川、富山、福井の三県で販売網を拡大していったのです。
さて、前述の20項目のうち、あなたはどれを自覚して実践しているでしょうか。そして、あなたの価値の伝え方はいかがでしょうか。