笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

ダークパターン(Dark pattern)という言葉をご存じでしょうか。

 

これは、ウェブサイトの表記やデザインを用いて、ユーザー(購入検討者)にとって不利な決定に誘導する手法をいいます。2010年ごろにイギリスのUX(User Experience)専門家であるハリー・ブリグナル氏が命名し、広く認知されるようになりました。UXとは、ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験のことです。

 

ダークパターンとはたとえば、申し込むつもりがないのに勝手にサービスに申し込まされたり、解約をしたいのに解約メニューが見当たらなかったりなどの「消費者を欺く行為」が該当。その手法はさまざまですが、2019年に米プリンストン大学が1万1000以上のECサイトを分析し、7種類に分けた分類を示しています。

 

1. Sneaking (こっそり)
ユーザーの同意なしに別の商品が紛れ込んでいたり、無料の試供品と見せかけて実は定期契約であることを隠したりする手法。たとえば、商品を注文したら説明なしにオプション商品が自動で選択され、紛れ込んでいるようなケースです。悪質な場合「詳細を見る」などのボタンをクリックしないと最後まで内訳がわからないように意図的に隠されている場合もあります。

 

2. Urgency(緊急)
事実と異なる期間を設定してユーザーに購入の意思決定を焦らせる手法。たとえば、「まもなくセール終了、お急ぎください!」といった表示でユーザーを焦らせながら、実際にはセール期間が開示されていないといったケースです。本当のセール情報を伝えることはユーザーの助けになりますが、誤認させることや焦らせることだけを目的にした表示は「消費者を欺く行為」に該当します。

 

3.Misdirection(誘導)
文章やデザイン、感情などを利用して、ユーザーに特定の選択肢を選ばせたり、選ばせないようにしたりする手法。たとえば、メールマガジンの購読を選択する画面などで「私は○○しないことを、希望しません」のようにユーザーを引っかけるような案内をしたり、「いいえ」をグレーアウトしたデザインにして選択できないように見せかけたりする手法です。

 

4. Social Proof(社会的証明)
他人の行動を根拠として商品に人気があるように見せかけて、ユーザーの購入意思決定に影響を与える手法。たとえば、その商品を多くのユーザーが閲覧してお気に入りに追加しているように見せかけたり、出自が不明なユーザーレビューで人気が高いように見せかけたりするケースです。

 

5. Scarcity(欠乏)
商品の希少性をアピールし、ユーザーに購入を急がせる手法。たとえば、商品のカート付近に「在庫3点」「在庫僅少」といったメッセージが表示されると、ユーザーは「急いで買わないといけない」と感じます。本当に品切れが頻発する人気商品であれば、在庫情報は有用な情報ですが、この心理を悪用して不当にユーザーを焦らせるのはダークパターンに該当します。

 

6. Obstruction (妨害)
登録解除やキャンセルなどの行動を取りたい場合に、過度な障害を設けてユーザーが希望する行動を取らせない手法。たとえば、サブスクリプションの契約を解除したいのにメニューが隠されていたり、解約する前に数ページにわたる長いアンケートに延々と答えなければ手続きを完了できなかったりするケースです。

 

7. Forced Action (強制)
ユーザーが希望の行動を行うために、関係のない行為をユーザーに強要する手法。たとえば、商品の情報を見たいだけなのに、個人情報を入力してアカウントの作成を強制するようなケースです。さらに、利用規約に合意すると自動的にメールマガジンの配信やプロモーション協力にも合意を強制するパターンもあります。

 

以上はウェブサイト上に見られるダークパターン(暗黒の形態)ですが、これらと同じような行為を「賢い商略」として、自らの商売で行ってはいないでしょうか。たとえ、こうした商略によって売上が伸びたとしても、それは一時的なもの。店に対する信用という何よりも大切なものをないがしろにする行為です。

 

人の振り見て我が振り直せ、といいます。あなたの商いに、こうした七つの闇が潜んでいないか、いますぐに振り返り、正しましょう。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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