ウォルマート(米)、カルフール(仏)、テスコ(英)、メトロ(独)と、業態はさまざまですが、多くの外資系小売業が鳴り物入りで日本へ進出し、時を経ずして鳴かず飛ばずのまま撤退していきました。冒頭の4社は一例にすぎません。本国ではどれも国を代表する小売企業なのですが……。
しかし、どんなことにも例外はあります。
1983年、米国ワシントン州シアトルに開業した「Costco Wholesale(コストコ)」は現在、世界に860店舗超を展開し、売上高は小売業世界ランキング3位となる578億ドルを数えます。日本でも1999年に福岡県久山町へ一号店を開業、今日では全国に33店舗を展開する日本成功組の一社です。
テレビなどメディアではたびたびコストコを題材としたコンテンツがつくられ、それが日本の消費者にうけています。さらに、地方のスーパーマーケットではコストコで仕入れた商品を小分けにして販売する「コストコフェア」が根強い集客力を持っています。
そんなコストコには商品や価格以外にも、私たちの耳目を集める特徴があります。
1500円から始まる高い時給です。最低賃金は2023年10月に、前年度より43円引き上げられてて初の千円越えの1,004円となりましたが、彼我の差は500円近くあります。全国最下位の893円の岩手県にもコストコ出店の噂があり、実現すればその差は600円強となります。
なぜ、そんなに高い時給が可能なのでしょうか。さぞかし販管費率が高いのかと思えますが、なんと9.6%と、ウォルマート(20.8%)や国内総合スーパー(27.5%)と比べてもかなり低い水準にあります。
秘密の一端にあるのが会員制度です。1年間有効で、還元特典付きの9900円と4840円の2種類があります(個人会員)。この収益があるからこそ、コストコは原価率90%超という“お値打ち価格”を打ち出せます。その魅力がまた会員を呼び、会員は次年度も更新をしてくれるわけです。
だからコストコは、良い品をどんどん安くに事業資源を集中させればいい。そして、人手不足を寄せ付けない高時給を実現できるから、店の魅力を高めることができます。
時給を上げる――これは人を必要とする事業にとって最重要課題。「いや、無理」という前にもう一度、事業構造を根本から疑ってみてはいかがでしょうか。