出張先で受け取った妻からの一通のショートメール。家で何かあったのかと開けてみると、こう書かれていました。
「1月いっぱいで閉店だって! 悲しいね……」
それは、このまちで暮らすようになった初めから、たびたび訪れた町中華。幼かった子どもが取り分けて食べていたころから、いつの間にか親よりもたくさん食べるようになってからも、家族で通ったなじみの店でした。あの味がもう食べられないと思うと、何か大切なものをなくしてしまったような心もとなさが付きまといます。
あなたにも、そんな大切な店があることでしょう。それがこれからも当たり前にあることはありません。企業信用調査会社、東京商工リサーチによると、ラーメン店の倒産・休廃業が過去最多を記録しました。
2023年のラーメン店の倒産は45件(前年比114.2%増)で、前年の2.1倍と大幅に増加。2009年以降では、2013年の42件を超えて最多を記録しました。また、休廃業・解散の動きも止まりません。2023年は29件(同31.8%増)で、2018年の23件を超えて2009年以降では同じく最多を更新しています。
もっとも、こうした動きはラーメン店ばかりではありません。
ラーメン店を含む飲食業界は、コロナ禍でゼロゼロ融資に加え、時短営業や休業に対する補償など、手厚い支援を受けてきました。しかし、コロナ禍が落ち着き、経済活動が活発になってもコロナ禍前の客足が戻らず、さらに食材や水道・光熱費の高騰、人手不足、人件費上昇などのコストアップが資金繰りを圧迫しています。
物価上昇の対抗策としては価格転嫁がもっとも有効です。しかし、庶民の日常食であることから、値上げは有名店でも容易ではありません。値上げできない代わりに、たとえば餃子が小ぶりになったり、一人前の個数が少なくなったりと、実質的値上げが散見され、それが客足を遠ざけるという悪循環も見られます。
他のまちで独り暮らしする長男にも妻が知らせると、「せめてもう一度食べておきたかった」とのこと。失って、初めてその大切さを思い知らされる体験をしました。残念でなりません。