漢字能力検定協会が募集し、師走に京都・清水寺で発表される「今年の漢字」。今年の発表までもう少し待たなければなりませんが、これまでにこんな漢字が選ばれてきました。東日本大震災が起こった2011年以降の漢字を同協会の発表から拾ってみました。
「今年の漢字」を振り返る
2022年 戦
ロシアのウクライナ侵攻により、「戦」争の恐ろしさを目の当たりにした一年。円安・物価高による生活上での「戦」い、スポーツでの熱「戦」・挑「戦」も注目された。
2021年 金
長く暗いコロナ禍において開催された東京オリンピック・パラリンピックでの日本人選手の活躍や、各界で打ち立てられた「金」字塔がひときわ輝くニュースとなった年。
2020年 密
世界中が新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けた一年。“3「密」”という言葉が提唱され、生活・行動様式が「密」にならないよう国民が意識し続けた。また、政治判断が「密」室で行われたことや芸能界での「密」会報道などでも使われた年。
2019年 令
新元号「令」和に新たな時代の希望を感じた一年。また、法「令」改正、法「令」順守、警報発「令」、避難命「令」としても使われた年。
2018年 災
北海道・大阪・島根での地震、西日本豪雨、大型台風到来、記録的猛暑など、日本各地で起きた大規模な自然「災」害により、多くの人が被「災」。自助共助による防「災」・減「災」意識も高まった。
2017年 北
「北」朝鮮ミサイルの「北」海道沖落下や九州「北」部豪雨などの災害から、平和と安全の尊さを実感した年。
2016年 金
リオ五輪に沸き、東京五輪に希望を託した「金」(キン)と、政治と「金」(カネ)問題に揺れた年。スポーツ界に新たな金字塔、マイナス金利初導入、シンガーソングライターの金色衣装などにも注目が集まった。
2015年 安
「安」全保障関連法案の審議で、与野党が対立。採決に国民の関心が高まった年。世界で頻発するテロ事件や異常気象など、人々を不「安」にさせた年。建築偽装問題やメーカーの不正が発覚し、暮らしの「安」全が揺らいだ。
2014年 税
消費「税」率が17年ぶりに引き上げられ「税」について考えさせられた年。「税」に関わる話題が政財界で多く取り沙汰された1年。
2013年 輪
日本全体のチームワーク=「輪」で2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催、富士山の世界文化遺産登録、サッカーFIFAワールドカップ2014に日本代表の出場が決定。日本中が「輪」になって歓喜にわいた年。
2012年 金
「金」に関する天文現象の当たり年。数多くの「金」字塔が打ち立てられた1年。「金(かね)」をめぐる問題が表面化。
2011年 絆
東日本大震災をはじめとした大規模災害により身近でかけがえのない人との絆をあらためて知る。なでしこジャパンのチームの絆にも感動。
企業経営者の「今年の漢字」
漢字能力検定協会の「今年の漢字」より一足早く、企業信用調査会社の帝国データバンクは、企業において2023年はどんな年であったのか、今年1年の事業活動を表す漢字について聞き、その結果を発表しています。
1位「変」
選んだ理由として企業からは「生活や働き方改革、人手不足、物価上昇など、世の中が急激に変化している」(建設)、「変革の変。DXなどにより時代の変化のスピードが速い」(不動産)との声があり、変化や変革の年と捉えています。
2位「耐」
3位「忍」
企業からは「原材料価格などの高騰が継続することに対して耐え忍ぶ年だった」(機械製造)、「コロナは収束したものの、円安や国際情勢、人手不足など先行きが見えないのが率直な思い。なんとか耐え忍んだ1年だった」(専門サービス)と、困難な状況への対応についての声が聞かれました。
4位「高」
「物価、原材料、燃料費、人件費などすべてにおいて高騰しており“高”を選んだ」(飲食料品・飼料製造)という声が聞かれました。
5位「乱」
「国際社会、政治、経済、社会などさまざまな面で秩序や規範が乱れた」(鉄鋼・非鉄・鉱業)という声が聞かれました。
皆さんが2023年を漢字一文字で表すとしたら、何になるでしょうか。今日より師走。今年一年を最後までしっかりと努め、総括をする時期です。それが来年をより実りあるものとするでしょう。
ちなみに私は一字に……「節」を選びました。ホンダの創業者である本田宗一郎さんは著書『俺の考え』で次のように記しています。
「竹には節がある。その節があるからこそ、竹は雪にも負けない強さを持つのだ」
さらに竹の節の役割は、単に構造を強くしているだけではありません。竹は、それぞれの節目でも細胞分裂をすることによって成長を速くしています。
一般の植物の成長点は茎の先端に一カ所のみですが、竹は成長点が節ごとにあります。「雨後の筍」のことわざのとおり、筍は成長が速いことで知られていますが、それはそれぞれの節で細胞分裂をして一気に伸びるからなのです。
今年は『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』という節を一つ刻めた一年。来る辰年に向けて、その節をさらに成長させるよう努めます。