「消滅可能都市」という言葉を憶えていらっしゃるでしょうか。
少子化や人口移動に歯止めがかからず、将来に消滅する可能性がある自治体を指す言葉で、2014年5月に増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる日本創成会議が打ち出した考え方です。全国の市区町村の半分にあたる896自治体を指定して、早急な人口対策を促しました。
具体的には、20~39歳の女性の数が、2010年から40年にかけて5割以下に減る自治体を消滅可能性都市に選んでいます。子どもの大半をこの年代の女性が産んでおり、次の世代の人口を左右するからという理由です。
日本創成会議は将来人口の推計に際して、20~39歳までに約3割の人口が大都市に流出することを前提としたのが特徴です。その結果、これまでの国の推計に比べて地方に厳しい結果が出たことで、当時大きなニュースとなりました。
日本創成会議の推計によると、青森、岩手、秋田、山形、島根の5県では8割以上の市町村に消滅可能性があるとされました。なかでも人口が1万人を割る市区町村は「消滅可能性が高い自治体」と位置づけました。一方、若い世代を惹きつけている一部の自治体は、2040年にかけて若い女性が増えると推計しています。
それからおよそ10年。
国立社会保障・人口問題研究所は12月22日、2050年までの「地域別将来推計人口」を、2020年の国勢調査結果に基づき公表しました。2050年に日本の総人口は2020年比2146万人減の1億468万人となり、東京都を除く46道府県で2020年の人口を下回ると推計しています。地方の人口減少と高齢化が同時並行で加速度的に進行する一方、東京への一極集中は一層深刻化すると予想しています。
推計によると、2050年に2020年比で30%以上人口が減るのは秋田、青森、岩手、山形、福島、新潟、和歌山、徳島、高知、山口、長崎の11県。この11県を含む25道県では、2050年に65歳以上の人口割合が4割を超えると予測されています。
2020年の人口を100とした場合の2050年の人口指数が最も低かったのは秋田の58.4で、人口が2020年の6割弱の規模に縮小することを意味しています。2050年の人口指数は青森61、岩手64.7、高知65.2、長崎66.2の順に低い結果となりました。
一方、総人口に占める東京の人口割合は、2020年の11.1%から2050年には13.8%に上がります。東京は2050年の人口が2020年を上回るが、人口が増えるのは2040年までで、それ以降は減少に転じると推計されています。
市区町村別にみると、市区町村全体の95.5%で2050年の人口が20年に比べて減少し、19.7%は2020年に比べて半数未満となる。人口が5000人未満となる市区町村も全体の27.9%に上り、多くの自治体で社会基盤の維持がより困難になる可能性があるとのことです。
2050年時点での各市区町村の年齢構成の推計では、少子高齢化の進行が顕著に表れています。0~14歳が人口の1割未満となる市区町村は全体の68.4%、経済活動を主に担う15~64歳の生産年齢人口の割合が半数を切るのは71.1%、65歳以上が半数以上を占めるのは32.2%に上るとされています。
以上、2014年の消滅可能都市と2023年の国立社会保障・人口問題研究所の2050年予測を見てきました。こうした確実に訪れる近未来に対して、対策を立てるのに早すぎることはありません。
小売業は地域に生かされ、地域を潤す産業です。地域という土壌に根を張り、そこから水や肥料や陽光を受け取り、芽を吹き、花を咲かせ、実を実らせます。その実の中には次代へつながる種を宿します。
そのサイクルが多くの地域で危機にあります。地産外商への取り組みは待ったなしです。