笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

たい焼き
たこ焼き
お好み焼き

 

「粉もんは儲かる」
「粉もんは不況に強い」

 

外食業界には昔からこうした常識という言葉がありましたが、それもまた過去のもの。変化こそ常態なのです。

 

企業信用調査会社の東京商工リサーチによると、2023年度上半期(4-9月)の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の倒産は12件(前年同期比500.0%増)で、前年同期の6倍に増えたそうです。年度上半期では、2010年と2014年に並び、2015年の13件に次ぐ過去2番目の高水準となりました。

 

 

このうち、「新型コロナ」関連倒産は年度上半期では過去最多の6件で、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産の半数(50.0%)を占めています。もう、粉もんは儲かる商売ではないのです。

 

その原因は、原材料、水道光熱費、人件費のトリプル高騰。「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」に欠かせない小麦や卵などの基本食材が円安で値上がりし、加えてたこ焼きなら蛸、たい焼きなら小豆といった主要食材も価格高騰と無縁ではありません。さらに光熱費など種々のコストアップが利益を圧迫しています。

 

コロナ禍で一時的に緩和した人手不足も顕在化し、10月からは最低賃金が全国加重平均1000円を超えました。これまでアルバイトに頼ってきた小規模店舗ほど、人件費上昇やコスト負担が増しています。

 

粉もんは庶民の食べものであり、日々の暮らしの楽しみですから、気軽に財布を開ける価格、つまり相場があります。たい焼きで1匹150円まで、たこ焼きでは8個で400円までがそれに当たると言われます。この価格、今世紀も4分の1に差し掛かろうとしていますか、あまり変わっていません。

 

一方で止まないトリプル高騰。どうすればよいでしょうか。二つの方策が考えられます。

 

一つは、適正利潤をとれる価格設定。価値ある商品をこれまで以上の価格でお客様に支持していただく方法です。その一例として紹介するのは、東京・阿佐ヶ谷の「たいやき ともえ庵」。自家製餡を一丁焼という手法で焼くこだわりのたい焼きは、薄くパリッとした皮にたっぷりの餡が入っているのが特徴です。

 

定番のたいやきが250円、人気商品の白玉たいやきが400円、月替わりたいやきが450円。さらに新商品「さんま焼き」は700円。店主の辻井啓作さんは、たいやきという次元を超えた新たな価格への挑戦を続けています。

 

同店には、一度焼き上げたたい焼きを半分に開き、つぶあんの側に皮を敷いてもう一度焼いた「たいやきの開き」というオリジナル商品もあり、こちらは400円。お客様は同店のたいやきの魅力の一つ、薄くパリッとした皮を楽しめ、店は廃棄ロスを減らせるという一石二鳥の商品となっています。

 

もう一つは、子どもがおこづかいで買えるような価格帯での商品開発。味と品質を落とすことなく、容量や売り方を工夫をすることで価格を抑えた商品です。いわば入門商品であり、生涯顧客への階段の第一段目となるような商品です。

 

どちらも肝心なのは、どのようなお客様に、どのような価値を、どのような商品で提供したいかという哲学。この時代、これまでと同じことをこれまでうまくいっていたからと続けることは許されません。この危機を、みずからを革新する好機と捉えてこそ商人です。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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