笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「悔いのない人生を送りたい。だから、本物の商売がしたいんだ」と、夫が語りかけると、妻は躊躇なくこたえました。「すてきですね、私も一緒にやらせてください」。

 

週末には1万個、平日でも5000個、お彼岸の中日ともなると2万5000個も売る、過疎のまちの個人店「主婦の店さいち」を営む佐藤啓二・澄子ご夫妻が、その商い道を歩みはじめた瞬間です。

 

 

宮城・仙台市街から車で30分ほどにある人口4200人ほどのまち、秋保(あきう)。温泉保養地として知られますが、それと並び立つ名物で知られる名店があります。おはぎとお惣菜で名高い80坪の小さなスーパーマーケット「主婦の店さいち」です。

 

もともとは秋保温泉の各旅館への食材や雑貨の納入を主な生業としていた佐市商店。親から商いを継いだ啓二さんは、商売に打ち込めない己に苦しんでいました。掛売り、配達の業者への商売では理不尽な仕打ちを受けることも珍しくなく、何よりお客様の笑顔が見えないことが佐藤さんにはつらいことでした。

 

商人の道場と言われる「商業界ゼミナール」に佐藤さんが参加したのは、このように“本物の商売”を探し求めていたときでした。そこで佐藤さんは運命的な出会いをします。

 

 

「店は客のためにある」という商業界創立者、倉本長治の言葉に感銘とヒントを得た佐藤さんは帰りの列車内で、栃木県でスーパーマーケット「ダイユー」を営む大林さんと隣り合わせます。同じ商業界ゼミナール参加者として、佐藤さんは自身の現状を相談すると、大林さんはスーパーマーケットという商いの素晴らしさを語りました。

 

この出会いを契機に、スーパーマーケットへと業態を変えた佐藤さんを、大林さんは親身になって支え、導いたのです。軌跡のスーパーマーケット「主婦の店さいち」が産声をあげ、佐藤ご夫妻が本物の商売へと歩みはじめたのは、こうした縁が出発点でした。

 

小才は、縁に出合って縁に気づかず
中才は、縁に気づいて縁を生かさず
大才は、袖すり合った縁をも生かす

 

新著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』では100篇の商いの知恵を、さいちをはじめさまざまな事例を通じて紹介しています。あなたも縁を生かす商人となってください。

 

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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