笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「K字経済」という経済用語をご存じでしょうか。富裕層と貧困層などの経済格差が拡大していくことを指す言葉で、右肩上がりのグラフと右肩下がりのグラフがアルファベットのKの字に似ていることから名づけられています。

 

コロナ禍の影響で経済的に潤う「勝ち組」と、マイナスの影響を受けてしまう「負け組」の差がじわじわと開いてしまう状況が続き、K字経済に拍車をかけています。K字経済は個人単位でも企業単位でも発生しています。

 

たとえば、世界最大の経済大国アメリカでは、上位10%の富裕層が国民所得に占める比率が40%を超えています。対して、下位50%を合計しても国民所得の10%あまりにしかなりません。

 

日本も米国ほどではありませんが、格差の二極化が進んでいます。所得格差を示す「ジニ係数」を国別に見てみると、日本は先進国の中でも中程度の格差があります。「一億総中流」と言われた時代はすでに過去の話です。

 

8月22日、厚生労働省は世帯ごとの所得格差を示す2021年の「所得再分配調査」の結果を発表しました。同調査は1962年以降、おおむね3年ごとに実施していますが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、1年遅れで行われています。

 

日本のジニ係数は現在、税金や社会保険料を支払う前の所得にあたる「当初所得」で0.5700(前回比0.0106ポイント増)となり、過去最大だった2014年と同水準となりました。ジニ係数は0から1の値で示され、格差が大きくなるほど「1」に近づきます。

 

当初所得ジニ係数は、2014年の0.5704から、前回2017年は0.0110ポイント減少していましたが、今回は再び増加に転じたことになります。厚生労働省は「高齢化が進み、当初所得が低い人が増えたことが要因」としています。

 

要因はほかにも、非正規雇用者の拡大や単独世帯の増加などによる世帯の小規模化があります。そうなると、高齢化が進む今後はさらに当初所得のジニ係数は「1」に近づくことになります。

 

当初所得から税金や社会保険料を差し引き、年金や医療などの社会保障給付を加えた「再分配所得」のジニ係数は、前回比0.0092ポイント増の0.3813。公的年金をはじめとする社会保障による再分配が一定の効果を上げていることがわかりますが、経済格差は依然として存在しており、今回は差が開いたわけです。

 

ちなみに0.4以上なら社会的不安が起き、0.5以上なら暴動などの極端な社会的対立も招きかねないとされています。根本的な解決が求められています。

 

こうした経済・社会環境の中にあって、商人は何ができるか。平和産業である小売業の役割は小さくはありません。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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