Q1.この1週間に日本茶(緑茶)は飲みましたか?
Q2.Q1で「飲んだ」と答えたあなた、それは茶葉から淹れたものですか? ペットボトル茶飲料ですか?
Q3.Q2で「茶飲料」と答えたあなた、急須をお持ちですか?
新茶のシーズンたけなわです。そこで、お茶にまつわる質問です。気軽にお答えください。
かつて「日本茶」というものがあった……
Q1は多くの人が「はい」と答えたことでしょう。農水省「茶葉をめぐる情勢」(令和4年6月)というリポートによると、一世帯当たりの緑茶・茶飲料の年間消費金額はこの20年近く1万円から1万2000円で安定しています。
しかし、Q2となると、茶葉の割合は多くはありません。前出のリポートによると、量と金額ともにリーフ茶の消費割合は落ち続けています。一世帯当たりのリーフ茶消費量は、2005年の1144gが2021年には759gに減少しているのです。
奈良・平安時代に遣唐使や留学僧によって薬としてもたらされたお茶は、戦国・安土桃山時代には千利休によって茶の湯という「道」となり、時代の経過とともに庶民の日常飲料となっていきました。
そのときに広まったのが急須です。江戸時代頃、中国から伝来した横手式の注器を、日本では茶を淹れる道具に転用。急須はお茶の大衆化に、便利な道具として大きな役割を果たしていきます。
しかし、便利さを求める人の性は留まるところを知りません。お茶は飲料として缶に詰められ、1990年代にはペットボトルとなり、その利便性から日本人はお茶を飲み続けています。一方、急須のない家庭も増えていき、茶葉の消費量も減り続けてきました。
Q2で「茶飲料」と答えた人の「茶の間」に、急須があることが稀な時代を迎えています。そもそも家族がそろって食事する場所はダイニングと言われて久しく、家庭に茶の間はなくなりました。
茶葉を売る場所も変わっていきました。前出のリポートによると、20世紀末(1999年)には専門店(38%)がスーパーマーケット(29%)を上回っていましたが、2021年にはスーパーマーケット(48.7%)が半分のシェアを占めるに至り、専門店(15.7%)は通信販売(15.1%)にナンバーツーの座すら猛追されています。もちろん通信販売の中には「専門店」が運営する通信販売もあるでしょう。
シェアの推移は店舗数を反映しています。経済産業省「商業統計」によると、お茶の専門店(茶類小売業)は、2002年に約1万2000店でしたが2014年には約6400店と、12年間に半減しています。それから10年近くたった現在、その数はさらに減っているでしょう。生活者は、もうお茶の「専門店」はいらないと考えているのでしょうか。
こんな動きもあります。
農林水産省は、コロナ禍の2021年、公益社団法人日本茶業中央会等の関係団体と連携し、お茶の消費拡大を図るために様々な暮らしの中でお茶を楽しむ「日本茶と暮らそうプロジェクト」を始めています。さらに今年(2023年)の新茶シーズンの本格化に合わせて、観光需要が回復する機会を捉え、産地や事業者と連携して、「出かけよう、味わおう!キャンペーン」を始めています。多くの人に日本茶の良さを体験してもらうために、全国の茶産地での茶摘み体験や、消費地も含めたお茶の淹れ方体験、お茶の試飲会などに関する情報を発信しているので、覗いてみてください。
さらに農林水産省は、子どもの頃から茶に親しむ習慣を育むために、学校教育の場で茶を活用した食育「茶育」を推進。今年(2023年)から、茶育に取り組む茶業関係者と茶育の内容等を学校関係者に共有することでマッチングを図る「茶業関係者×農林水産省『茶育』プロジェクト」を開始し、このプロジェクトに参画する茶業関係者を広く募集しています。
専門店が変わるための三つの「力」
さて、このときお茶の「専門店」は何をすべきでしょうか。
産地の特徴や味の違い、お茶の淹れ方、茶葉の種類によってお湯の適温が違うことなど、その専門性を発信することは大切です。しかし、お客様にとって茶葉はすでにスーパーマーケットで買うものになっています。専門性だけを裃を着て伝えるだけでは、お客様は気後れして、格式が高くなりすぎた店へ足を運ばないでしょう。
「お茶を売る店」から「お茶を楽しむ暮らしを提案する店」へ変わるため、やるべきことは少なくないでしょう。そのとき欠かせないのは、変えるべきことと変えてはならないことを見分ける選別力と、変えるべきことを変えていく行動力、変えてはならないことをお客様にわかりやすく伝える表現力という三つの「力」にあります。
先日、東京有数の商店街、戸越銀座にある「茶雑菓」という店を訪れました。店名の「茶」は日本茶、「雑」はお茶を楽しむ雑貨、「菓」はお茶をよりおいしくする菓子。ここには、前述の三つの「力」がみなぎっていました。ぜひ、訪れてみてください。
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