笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

丸広百貨店(埼玉県)、名鉄百貨店(愛知県)、近鉄パッセ(愛知県)、そして東武百貨店(東京都)。これら百貨店に共通するテナントがあるのですが、ご存じでしょうか。ほとんどの人が知っているし、利用したことがある店です。

 

答えは100円ショップの「大創産業」。今年2023年2月、東武百貨店池袋本店に、百貨店内店舗としては初となる「ダイソー」「スタンダードプロダクツ バイ ダイソー(Standard Products by DAISO)」「スリーピー(THREEPPY)」の3ブランドを複合させた都内最大の旗艦店をオープン。ロレックスやカルティエ、シャネルといったプレステージブランドと同じフロア(6階)に出店したことが話題になりました。

 

このニュースに象徴されるように、ワンコインで生活用品の多くが揃う「100円ショップ」の成長が続いています。企業信用調査会社の帝国データバンクによると、ダイソー、セリア、キャンドゥ、ワッツの大手4社を中心とした国内100円ショップ市場(事業者売上高ベース)は、2022年度は前年から7.2%(約671億円)増の約9969億円となる見込みで、1兆円に迫る規模となっています。このペースで推移すると、2023年度には1兆円の突破が確実とみられています。

 

 

店舗網も大幅な増加となり、大手4社の店舗数は2023年3月末時点には9000店舗前後に達する見込みで、前年から300店以上、10年前の2012年度からは3000店以上増加しています。各社とも年間100店超の新規出店を続けており、早ければ2025年度にも国内累計で全国1万店規模を突破する見通しです。

 

トップ企業の大創産業は、創業者の矢野博丈さんが家庭用品販売の矢野商店を1972年に創業。1991年に直営1号店を開業すると、平成デフレの消費者ニーズをつかんで1998年には国内1000店舗を達成、いまや国内に4000店舗以上を数えます。また、2001年には台湾に海外1号店を開くと、アメリカやオーストラリア、カナダなどに店舗を拡大し、現在は26の国と地域に2300店舗を展開しています。

 

 

これまでの主な出店先は量販店や商業施設といったリーズナブルな価格帯の商品が揃う施設でしたが、前述のとおり、これまで縁のなかった百貨店へも展開を加速。さらなる成長をめざして大創産業が取り組んでいるのが、新業態開発とプライスラインの拡充(脱100円均一)という戦略です。

 

まずは2018年、300円ショップ「スリーピー」を立ち上げます。若い女性をメインターゲットに、かわいらしいデザイン・色づかいの雑貨を中心に販売。価格と実用性を追求したダイソーとは一線を画した品揃えが特徴です。

 

 

続いて2021年には、「ちょっといいのが、ずっといい。」をコンセプトに「スタンダードプロダクツ」を出店。ダイソーともTHREEPPYとも異なる、汎用性の高い落ち着いたデザインの商品を、生活雑貨に特化して展開しはじめました。

 

余剰が問題となっている国産の間伐材を加工したエッセンシャルオイルや箸、「熊野筆」を使った化粧ブラシや岐阜県関市名産の「関の刃物」など、社会課題の解決を図る商品や日本各地の伝統工芸品を提案。それらを、300円を中心とするリーズナブルな価格帯で販売するという斬新さが大きな注目を集めています。

 

こうした新展開を担うのが2018年に創業者から経営のバトンを託された矢野靖二社長。「国内外1万店舗・売上高1兆円」という大きな目標を掲げる同社にとって、百貨店への出店は足掛かりの一つなのかもしれません。

 

 

「もう守っているだけでは駄目。何でもいいから新しいことをせんといかん。とにかく自ら変化せんと滅ぶしかない」とは創業者、矢野博丈さん。広島の本社でインタビューしたときに聞いた言葉です。変化しないと滅ぶ――これは、企業はもちろんあらゆる存在の宿命。ユニクロの柳井正さんも「Change or Die」と言っています。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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