人は生きるために働きます。
しかし、働くのは自分だけのためではありません。家族、地域、もっといえば地球上あらゆる生物まで含めた宇宙までの永続を願うためです。たとえそこまで意識していなくても、働くというのはそういうことです。
パターン化、標準化が近代社会の一つの方向だった時代が終わり、個々の生き甲斐を重視する時代に入ったことが21世紀の大きな特徴だとすれば、地方の自治や民族の自立が問われるのもうなずけます。
巨大な資本や権力が世界を同じ色に染め上げようとした20世紀は当の昔に終わっています。すべての人たちが自らの工夫によって、より良い未来を目指す社会が始まっています。
そのときに大切なのは、「共」生と「個」性のバランスです。商業はこの二つを結合させる役割を担っています。そうなると、これまでのやり方についてもういちど根本から見直さないとなりません。
「共」生と「個」生の融合は、常に前向きの人間精神に宿ります。商いはこの道を開く人間の最先端に立っているのです。かつて、久留米のある商人を取材して思ったのはこんなことでした。
写真は、久留米まちゼミのリーダーの一人、西原健太さん。一つひとつのまちゼミ講座を、一人ひとりのまち商人を、一枚のポスターで表現する「まちゼミポスター」は久留米というまちの個性の表現であり、それら個性が同じまちで共に生きていこうとする連帯の表明です。
残念ながら西原さんは2021年8月3日、40歳という若さで、道半ばで急逝されました。こうして彼のことを落ち着いて書くまでに、長い時間が必要でした。彼の志は久留米、そして全国のまち商人に受け継がれています。彼は私たちの記憶の中に生き続けているのです。