笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「吉田パンを食べて吉が来る――そんなコッペパンでありたい」というお客様のへの約束を掲げるコッペパン専門店の「吉田パン」は、岩手県盛岡市民のソウルフードとして知られる「福田パン」の精神と技術を受け継ぎ、2013年に開業。朝から行列が絶えず、半数以上がリピート客という人気店です。

 

カウンター越しにあるガラスケースには、数十種類の具材が並べられています。同店では、お客様が注文した具材をその場でコッペパンにサンドする対面販売を行います。商品ラインナップは30種類ほど。おしながきにある具材の中から、組み合わせを変えてオリジナルのコッペパンを注文することも可能です。

 

1日2500個を販売

 

JR亀有駅南口から徒歩3分ほどにある同店は、コッペパンブームの火つけ役とも言われる人気店。目の前で注文のコッペパンがつくられていく様子を撮影するお客様も多いそうです。

 

「吉田パンの強みはライブ感があることです。今までは、パン屋のレジ横にひっそりと置かれることが多かったコッペパンですが、見せることで主役にしました」とは、店主の吉田知史さん。「たった一人でも、お客様が来てくれることに対して感謝の気持ちしかありません。当たり前のことを丁寧に行うことが何よりも大切です」

 

 

一日2500個ほど焼くコッペパンは、ほぼ毎日完売するため廃棄ロスはゼロに近く原価率は約30%をキープしています。経営が安定して店が存続することが、結果的にお客様に喜んでいただくことにつながると考えているからです。

 

人材育成はマニュアル化をしていません。現在、従業員数は正社員15人、パートタイマー17人の計32人。必要最低限の約束ごとや決まりはありますが、お互いがどう支えあうかを学ぶことが重要との考え方によります。

 

吉田さんは「マニュアルを守り、作業ができる人を育てるのではなく、自分で考え仕事をできる人になってほしいと思います。おいしいパンをつくるためには、一人ひとりが吉田パンの主役でなければなりません」という。

 

また同店では、お客様との関係性を大切にし、自分たちの手で販売することにこだわります。そのため、大手百貨店からの出店依頼や卸売の引き合いもありますが、現在は本店と北千住店で数量限定の販売店のみの出店にとどめ、多店舗展開をするより、長く愛される店づくりを目指しています。

 

「どの土地であっても、たった一人の目の前のお客様に満足していただける商いをしたいと思います」

 

400店より400年を目指す

 

「小売業の衰退の原因は、商売の原点である感謝の気持ちを忘れてしまったからではないでしょうか。目の前にお客様がいるリアリティを大切にし、一人でも来てくださることには感謝の気持ちしかありません」という吉田さんの目標は、目の前の一人ひとりのお客様を大切にする「400店舗より400年愛される店づくり」です。

 

 

その信念の根本には、何のために商いをするのか、という問いがあります。金儲けを目的とするのか? 自店が大切にしたいお客の幸せの手伝いがしたいのか? 後者こそ商いの目的、前者はその結果として得られるものにほかなりません。

 

いたずらな規模拡大、店舗数増を目的として贅肉体質のまま膨張するのではなく、自らの独自性と価値を強化するために“小さく狭く濃く深く”に徹する吉田パン。その先には、お客様には笑顔、事業者には筋肉質な高利益体質の商いがあります。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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