笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

このたび、人を大切にする経営学会(坂本光司会長)が主宰する「人を大切にする経営学に関する研究奨励賞」の図書部門で優秀賞(経営者・実務家部門)をいただきました。出版の機会を与えてくださった同文舘出版の古市達彦編集長に感謝申し上げます。

 

受賞作は昨年6月に上梓した『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』(同文舘出版)。コロナ禍で厳しさを増す経営環境下、地域経済の一翼を担い、まちの暮らしを守る中小事業者の皆さんに少しでも役に立てればと書いたものです。

 

人を大切にする経営学会とは「人をトコトン大切にしている企業こそが、好不況にぶれず好業績」という先行研究の深化・体系化と、人を大切にする企業経営の普及を目的とする世界でも稀な学会。発起人代表の坂本光司会長とのご縁は、坂本先生が法政大学大学院教授で、私が商業経営専門誌「商業界」の編集者のときのことでした。

 

坂本先生には長期間にわたって連載記事をご担当いただいており、そのインタビューのため、毎月のように東京・市ヶ谷の研修室を訪ねました。そのたびに、人を大切にする経営を実践する企業についてお聞かせくださった時間は、私にとって「取材」というよりも「個人授業」と言うべき学びに満ちたものでした。

 

ご多用のところ、いつも綿密な準備をされた上で、丁寧にご説明くださったことを、あらためてお礼申し上げます。そのとき学びが本書の礎となっております。そして、この栄誉ある賞に選んでくださったことに感謝申し上げます。

 

 

さて、本稿では拙著でお伝えしたいことのポイントを説明させていただきます。人口減少と経済の成熟化が進む今日、人口増加、経済拡大を前提としたビジネス成功法則はもはや過去のものです。それに薄々気づいていた矢先、新型コロナウイルス感染症が私たちを襲い、環境変化をさらに加速させました。

 

消費意識や生活様式は一変し、もう今までのやり方でいくら頑張っても明るい未来にはたどり着けません。いえ、頑張れば頑張るほど、当人ばかりか関わる人たちが不幸になります。

 

では、どのような法則に則って激変の時代を生き抜けばいいのでしょうか。これまでの成功法則とされてきたマーケティングの定石、product(製品)、price(価格)、place(立地)、promotion(広告宣伝)の4Pに代わる「新しい4P」。それは次のようなものであり、拙著の主題です。

 

【story-rich product(物語性豊かな商品)】
product(商品)はstory-rich(物語性の豊かさ)であることが求められます。商品はこれまで機能、価格、デザインばかりが先行してきました。しかし、それらに「付加価値」が加わってこそ、思わず誰かに伝えたくなる豊かな物語性を持ちうるようになります。

 

【philosophy(哲学・理念)】
生活者は単に「安さ」だけを求めているのではありません。多くの事業が低価格ばかりを訴求し、ほかの選択肢を提示しないから、私たちは価格で選ばざるを得ないのです。商品の中にphilosophy(哲学・理念)を見出すことができれば、price(価格)は二の次になります。

 

【personality(個性・人柄)】
IT技術の発達により、私たちは安価かつ臨機応変に販売促進を行えるようになり、その結果、多くの情報があふれ、その中から自分にとってベストな情報を見つけることは非常に困難さを増しています。このとき私たちが選ぶのは、信頼のおける人からの情報です。あなたが信頼のおける対象となるために大切なのがpersonality(個性・人柄)なのです。

 

【promise(約束・絆)】
商業はこれまで、より恵まれたplace(立地・流通)を求めてきましたが、いまやスマホ一つでほとんどの商品を購入できます。逆に、どんなに辺鄙な立地にあろうと、商圏を超えて多くの顧客が訪れる繁盛店があります。顧客が求めているのは、そこを訪れれば必ず叶えられるpromise(約束・絆)なのです。

 

以上から、お客様は信頼の置けるpersonality(個性・人柄)とpromise(約束・絆)を結ぶことを望むようになります。このとき、信頼の根本には、おのれの商いに対するphilosophy(哲学・理念)があり、それを具現化したstory-rich product(物語性豊かな商品)がなければなりません。

 

コロナ危機は、これら「新しい4P」の必要性を加速させました。そして、それは後戻りすることはないでしょう。だからコロナを危機と捉えず、自らが変わるためのチャンスと捉え、その根幹に「恕」、つまりおもいやりの心を持ちましょう。人を大切にする経営とは、おもいやりの経営のことなのです。

 

この記事をシェアする
いいね
ツイート
メール
笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

新刊案内

購入はこちらから

好評既刊

売れる人がやっているたった4つの繁盛の法則 「ありがとう」があふれる20の店の実践

購入はこちらから

Social Media

人気の記事

都道府県

カテゴリー