こまかい秋雨が落ち葉を濡らし、急に涼しくなった日の日没前。自宅に戻ると、郵便受けに一葉の絵はがきが入っていました。送り主は、長く仕事をご一緒させていただいているコンサルタントの方でした。絵はがきの絵は、「暮しの手帖」初代編集長、故・花森安治さんが書いた静物画。それはおそらく表紙を飾ったものの一つでしょう。
私には二人の尊敬する編集者がいます。一人は「商業界」創立者、倉本長治。そしてもう一人は「暮しの手帖」創立者、花森安治さん。奇しくも両誌の創刊は同じく昭和23年(1948年)。日本が敗戦から立ち上がり、それまで統制されていた情報を焦がれるほどに求めていた時代でした。
これは あなたの手帖です
いろいろのことが ここには書きつけてある
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは
すぐには役立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮しの手帖です
この一文は「暮しの手帖」創刊以来、表紙裏面に掲げられている読者へのメッセージ。「暮しの手帖」は広告を一切取らず、読者一人ひとりの購読料金によって発行するという世界中を見ても稀有な事業スタイルを持つ、日本を代表する雑誌メディアの一つです。
考えてご覧下さい
心から一人の人を
喜ばせることが
どんなにもムズカシイ事か
ところが私は
一人一人のお客様に
その喜びの商いを
毎日繰り返している
何という幸福
何という栄光
ああ商人とは
こんなにも嬉しいもの
かたや倉本長治は「商業界」で、商業者は消費者に代わって商品を選び、仕入れ、販売するのだから、その対価として適正利潤を得るのは当然と明言。また、商業者は消費者に対し公平公正であらねばならず、それが商業を成長させ、消費者の生活向上、社会の発展につながると主張し続けてきました。
こうしたメッセージが、江戸時代以来「士農工商」と卑しめられてきた商人たちに自信と勇気を与え、商業近代化の精神的原動力となったのです。日本の戦後商業は、倉本の主張した「店は客のためにある」から再出発したのでした。
二人に共通するのは、日本人の日々の暮らしを心豊かにしていくという志です。倉本はその対象として商人を選び、花森さんは生活者を対象としました。対象の違いはあるけれども、その目指すところは驚くほど共通しています。
そして二人とも、何よりも現場・現実・現物をもっとも大切にしました。真実は現場・現実・現物にある――企画、取材、執筆、編集、講演、指導と、数え上げれば限りないほど多忙を極めながらも、何よりも読者との接点を、この二人は大切にしていました。
まったく及ばないながら、私が現場を大切にするのは、この尊敬してやまない二人から学んでいるからにほかなりません。気がつくと取材を通じてお会いした商人は4000人を超えていました。拙著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』は、そうした経験から生まれました。
絵はがきの書面には、拙著の感想が書かれていました。
「お送りいただいてから時間がたってしまいましたが、夏休みに入りやっとゆっくり読む時間が出来ました。地元の書店ではビジネス書の棚にPOP付きで紹介されており、嬉しくなりました。ビジネス書の分類ですが、読み終わってみますと、日々の商いのお話に心あたたまる思いがいたしました。大変な時期ですが、まだまだいろいろ出来ることがある、そんな気持ちになります」
尊敬する花森安治さんの絵はがきは、私をねぎらい、これからも頑張れと励ましてくれるようでした。二人の編集者が目指した、日々の暮らしを心豊かにする活動をこれからも続けていきます。
「二人の編集者が目指したもの」への2件のフィードバック
お客様のお悩みにどのように
お応えし、どんなことを叶えて
差し上げることができるのか?
お客様、目の前の人を心から
喜んでもらえることは、
何かと、実はお客様から学ばせて頂き
日々成長させて頂いています。
商人のあり方が
これからの時代、
益々、大切になってくると感じました。
ありがとうございました。
ありがとうございます。今日のブログに書きましたが、まずは自分をおもいやること。そこを忘れないようにしたいですね。