笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「値上げできない!」

 

取材をしていると、多くの商人の皆さんから聞く言葉です。とりわけ、自ら商品をつくる製造小売りに携わる方々からは、原材料、資材、水道光熱費などの値上げのたびに悲鳴のような声が聞こえてきます。その影響を直接受けるしかないからです。

 

「ならば、価格を上げればいいのでは?」

 

そう言おうものなら、彼らの多くは「お客様に申し訳ない」と言います。申し訳ないという考えも確かでしょうが、同時に「これまでご愛顧くださっていたお客様が離れるのではないか?」「売れ行きが落ちてしまうのではないか?」という不安もあるはずです。

 

値上げに際して採る方法は二つあります。

 

一つはシュリンクフレーション。価格は変えずに内容量・数量を減らすという方法で、「実質値上げ」「ステルス値上げ」「隠れ値上げ」と言われています。食品分野で多く見られ、少し前に話題となったのが「明治おいしい牛乳」でした。

 

 

同製品は新容器への変更を機に、容量を1000mlから900mlに減量、新容器によっておいしさと利便性が向上したことをうたいました。従来品に比べ横幅が約5ミリ小さいから「手が小さいお子さまや握力が弱い高齢者でも持ちやすい」、従来品に比べ筋肉への負担が1割軽減されるので「(従来品より)楽に注ぐことができる」とは同社のプレスリリースの弁明です。

 

もう一つは売価変更、正面切っての値上げです。値上げをせざるを得ない理由を正直に顧客に伝え、誠実に理解を求める手法です。

 

 

たとえば、国民的アイスとも言うべき人気を誇る赤城乳業の「ガリガリ君」。2016年4月に60円から70円(税別)へと25年ぶりに値上げの際に、社長はじめ社員一同が頭を下げる企業CMが話題になりました。さらにCMを流すタイミングで新社長への交代を発表し、値上げに至った経緯を説明。ネット上には値上げへの不満よりも、「よくこれまで頑張った」という好意的な声があふれました。

 

さて、あなたはどちらの値上げを選びますが?

 

個人的な見解ですが、前者には言い訳じみたものを、後者には共感をおぼえます。そもそも、あなたの店は単に価格が安いから選ばれてきたのでしょうか? お客様は、価格の理由がわからなければ、その商品の価値を知らなければ、安いものを選ぶのが当然です。

 

そもそも、価格設定は商人の哲学の表われであり、意思表示です。そこに、価格の理由と価値を伝える工夫がほどこされているでしょうか。価格は大切です。しかし、誰かを犠牲にした安さは正義ではありません。

 

 

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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