「両親から贈られたけど、気に入らないからキャンセルしたい」
こんな電話をかけてきたのは、小さなお子さんを持つ母親でした。キャンセルの対象は愛する孫への祖父母からのプレゼントです。同じような電話を何本も受け、その人は自らが携わる業界に著しい危機感を覚えました。
「その人」とは、節句人形製造販売業「ふらここ」の原英洋さん。価格競争激しい業界にありながら、値引きとは一切無縁で、予約は1年待ちという人気です。詳しくは新著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』に譲りますが、顧客ニーズに耳を澄ませ、伝統を創造的革新し続けた結果です。
そもそも、桃の節句と端午の節句は、子の成長を願い、家族の絆を深める機会として古くから親しまれる伝統的な季節行事であり日本の文化。しかし、その市場は衰退を続け、典型的な構造不況業種になっています。
団塊の世代が生まれた時代には270万人あった出生数が、今やおよそ86万人と3分の1以下。少子高齢化、人口減少が進む日本で、今後この傾向が旧に復する見込みはほとんどありません。絶対数の減少ばかりでなく、節句人形を購入する割合も出生数の3分の1にまで落ち込んでいます。
なぜ、ふらここは衰退市場にあって業績を伸ばし続けるのでしょうか? それは原さんが、節句人形を買う「3分の1」のマーケットを狙って価格競争を仕掛けたのでははく、節句人形を買わない「3分の2」のマーケットの“買わない理由”を解決し、新たな価値を創造していったからにほかなりません。
商いとは、不便、不満、不足、不利、不快といった”不”の解決業。あなたの商いに、見落としているお客様の”不”はありませんか? 「新しい4P」の二つめ、story-rich product(物語性豊かな商品)づくりは、”不”を見つけることから始まるのです。