笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「鬼」とは、ある一つのことに精魂を傾ける人のこと。それほどのものに出合えたら、その人生は豊かなものになるでしょう。今回お奨めする一冊『店長の鬼100則』の著者もその一人です。

 

地方の洋装店の家に生まれ、大卒後に勤めた業界最大手の呉服店チェーンでトップ販売員となり、家業を継ぐとわずか8年で42店舗、年商30億円の専門店企業に成長させます。その後、病を得て事業を清算しますが、社長時代の20年間で数百人の店長を育てました。

 

そんな著者の持論は「お客様のために店はある」。しかし、社長時代のある酒席で、持論を「綺麗事」と言われ、「売上のためじゃないんですか」と揶揄されたことがありました。

 

「『お客様のために店はある』という表現は、綺麗事が好きだから言うのではなく、大義が必要だから言うのだ。もし大義をなくしたら、理想を語れなかったら、誇りややりがい、モチベーションを失い、店を支えるものがなくなる。倫理観を失ったらそれこそゆがんだ売り方が横行するだけだ。そんな仕事、誰がやりたい? 大切なのは『人のため』が『自分のため』になるという発想だ」(本書31ページ)

 

ところで最近、「給料が上がったとしても、店長になりたくないという人が増えている」という声を現場でよく聞きます。そこには売上目標ノルマに追われ、人間関係に悩み、長時間労働を余儀なくされる現場の矛盾が見え隠れします。店はいつから、これほど希望のない場所になったのでしょうか。

 

しかし、時代や環境のせいにしても「何も始まらない」と著者。「唯一やれることは、自分自身のイノベーション」であり、自分を変えれば「そこに必ず活路はある」と断言します。

 

本書は「店長は完璧じゃなくていい」「値段で売るな、価値ですすめよ」「伝えたいなら、まずスタッフの理解者であれ」など著者の実体験をもとに、すべてのリーダーに贈る“自分磨き”の100則。加えて巻末に添えられた101個目のメッセージこそ、本書を奨める理由です。それについては、ぜひ本書を訪ねてみてください。

 

本書の左に添えられるのは、著者による「ありがとうといわれる接客カレンダー」。31編の接客の心得が記されています。私がいちばん好きなのは「話術より聞き方を武器にせよ」。これは取材の心得でもあり、優れた販売員ほどお客様の本音を聞くことができるものです。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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