冒頭の写真は、かつて東京都港区麻布台二丁目、飯倉交差点角にあった商業界会館の主幹室に飾られていた額。商業界創立者の倉本長治が晩年に筆を執った場所であり、額に収められた揮毫は長治によるものです。
そこに書かれているのは、江戸時代中期の儒学者、思想家、荻生徂徠の「収心の則」の一部。人材育成の要諦について、徂徠は四つのポイントを挙げています。長治がなぜこの言葉を写し、主幹室に掲げていたかを知る由はありませんが、人材育成について考えるとき、いつも思い出します。
以下に記します。そういえば、徂徠は「米は米にて用に立ち、豆は豆にて用に立つ」という言葉も遺しています。あなたのご参考になれば幸いです。
一、人の長所を始めより知らんと求むべからず。人を用いて初めて長所の現るるものなり。
一、人は長所のみとれば即ち可なり。短所を知るを要せず。
一、己れが好みに合う者のみを用うるなかれ。用うる上はそのことを十分委(ゆだ)ぬべし。
一、上にある者、下の者と才智を争うべからず
新著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』では長治の教えを100篇の短文にまとめており、その一つに次のような一文があります。
自らの損得の囚われず
自らの才と徳を育て
ともに働く人を育てることは
どんな事業よりやりがいがある
その意味するところは、ぜひ本書をたずねてください。