真の商人
であることが
即ち立派な
人間ということだ
これは新著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』の主人公、倉本長治が遺した言葉。倉本は「繁盛」とは、お客様との間に心の結びつきをどれほど深くつくれるかによって決まると説きました。
資本、設備、経営技術などによって繁盛が決まるわけではありません。それ以上に大切なのは「お客様のための店」という精神が、店の隅々にまでにじみ出ていることです。
生きづらいこの世の中にあって、よりよい明日を求めて今日を暮らしている多くの生活者は、友人としてのあたたかな手をさしのべてくれる商人を求めています。商人とは、生きることの喜びと明日への活力を与えられる存在なのです。
たとえば、「無印良品」を国内外に1200店舗超営む良品計画の金井政明会長は、生きることの喜びと明日への活力「感じ良い暮らしと社会」と表現。従来のチェーンストアでは考えにくい立地へ積極的に出店し、地域の生活者の暮らしをあたためています。金井会長は倉本の膨大な著作の中から10篇を選んで冊子をつくり、良品計画の社員と共有しています。
消費者は単に物を求めているのではありません。物とお金との取引を超えて、商人の「人間」を求めています。誠実な、正直な、あたたかな心を求めています。一人のお客様の喜びのために誠実を尽くし、一人のお客様の生活を守るために利害を忘れる。そんな人間としての美しさをこそ、商店経営の姿なのです。
金儲けの方便だと思っていた商いが、自分の生涯をかける価値ある聖業だと理解したとき、一人のお客様のために商品としてのいのちをかけることに、生きがいを知るのです。商いとは人間愛の聖業です。日々誠実な営みこそ商人の生きる道なのです。あなたが生涯をかけた仕事の尊さを知りましょう。