笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

公益性×時代性×革新性

一人だけで幸せになれるものではありません。本当の幸せとは、関わる人たちを幸せにしようと努め続ける先に得られるごほうびのようなものです。

 

関わる人たちとは、あなたの商いを通じて縁を結ぶお客様であり、お客様の満足向上を目指して共に働く仲間であり、同じく取引先であり、商売をさせてもらえる地域社会であり、支援してくれるサポーターです。彼らすべてが等しく喜んでもらえてこそ本当の幸せの姿です。誰かが不満を持っていたり、損をしたりしている商売は偽りにすぎず、けっして長続きはしません。

 

また、そうした状態は今だけあればでいいはずもありません。商いの本質は「あきない」とよく言われますが、未来に向かって幸せを追求したとき、はじめて商いは永続性を持ちます。いっときの刹那的な満足ではなく、将来にわたってそれが実感できる営みにこそ私たちの仕事の使命があります。

 

新著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』の主人公、「昭和の石田梅岩」と言われた経営指導者、倉本長治はこんな言葉を残しています。

 

商売は今日のものではない。
永遠のもの、未来のものと考えていい。
それでこそ、本当の商人なのである。
人は今日よりも、より良き未来に生きねばいけない。

 

より良き未来を生きるために、大切なことがあります。それは、あなたの商いを通じて、まだ出会っていないお客様、そしてこれから生まれてくる未来のお客様のために、あなたの店が永続的に繁盛することです。そのために欠かせないのが「公益性」「時代性」「革新性」の3点です。

 

公益性=世のために、人のためになっているか?

 

倉本長治の盟友、経営指導者の新保民八は「公益性」について、こんな言葉を遺しています。新保は商売の前提に「正しさ」を求めました。

 

正しきに
依りて滅ぶる
店あれば
滅びてもよし
断じて滅びず

 

世のため、人のためになる正しさこそ「公益性」の本質です。これなくして商売は永続性を持ちませんし、そもそも商売をする意味がありません。関わる人たちを笑顔にするところに商人の喜びがあります。

 

時代性=今この瞬間のニーズをとらえているか?

 

商いとは、笑顔になってほしい人の不満、不都合、不便、不利益といった「不」を解消する営みだと本書で繰り返してお伝えしてきました。そうした「不」にお客様自身が気づいているなら、解決は難しいものではありません。

 

しかし、なんとなくもやもやとして、自身も気づいていない「不」の解消はやっかいです。「時代性」とは、そのときどきの社会や世相を覆う漠然とした「不」のこと。それを見つけ出し、解消策を提示できたとき、お客様はあなたに信頼と親近感を覚えます。

 

倉本、新保の親しい友であった経営指導者、岡田徹はこう遺しています。病の床にあった岡田を励まそうと、倉本が編集した一冊『岡田徹詩集』から引用します。

 

一人のお客の喜びのために
誠実を尽くし
一人のお客の生活をまもるために
利害を忘れる
その
人間としての美しさをこそ
わが小売店経営の
姿としたい

 

一人のお客様の喜びと生活のために利害を忘れたとき、「時代性」という社会全体の「不」の解消の糸口が見つかります。「世のため人のため」とはよく言われますが、人のために尽くしてこそ、世のために何ごとかをなしうるのです。

 

革新性=常に変化に応じて変わり続けているか?

 

世の中に変わらないことはありません。変わらないものがあるとすれば、「すべては変わり続ける」という事実のみです。正しさだって変わるし、正しさを追求する手段ならなおさらです。

 

新保は前述の言葉に続けて、こう書き残しています。ここに「革新性」の本質と、その必要性を見ることできます。

 

古くして古きもの滅び
新しくして新しきもまた滅ぶ
古くして新しきもののみ
永遠にして不滅

 

古くから残り続ける商いの「あり方」でも「やり方」が時代遅れの古びたものであったり、「やり方」は新しくても「あり方」が未熟であったりするものは滅ぶ、と新保は指摘しています。永続できるのは、古くから残り続ける「あり方」を時代に適応した新しい「やり方」で実践するときのみというわけです。

 

売る者の幸福とは、買う人の幸福をつくるところにあります。だから繁盛という大樹は、お客様とあなたに芽吹いた幸福の双葉から育ちます。

 

しかし、どれだけ学んでも、それだけでは繁盛への道は拓かれません。その道を歩く者のみに拓けるのです。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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