笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

東京都港区麻布台2丁目4番9号。

 

今はなくなってしまった商業界会館の住所です。そのころの写真を探していて出合ったのが一枚の紙切れを写したもの。そこには「解雇通知書」と書かれています。

 

日付は2020年3月31日。1948年8月12日、いまだ戦後の混乱が続く中、その正道への復興を目的に設立された株式会社商業界が、70年余を経て従業員に倒産を告げた日でした。

 

末筆には「貴殿のご健勝と今後のご発展を心より祈念」と書かれていました。さて、どうすべきか……。まずは、縁あってお付き合いをしていた取引先にかける迷惑を最小限にすることと考えました。具体的には、編集に携わった書籍の刊行継続と、進行中の企画の実現です。すべてとは言えませんが、いくつかの本の命をつなぎ、いくつかの本を世に送り出しました。

 

小林久『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)
日野佳恵子『女性たちが見ている10年後の消費社会』(同文舘出版)
萩原紀行『野菜も人も畑で育つ』(同文舘出版)
飯田結太『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)

 

どれも私にとって思い出深い書籍です。ぜひお手にとっていただければ光栄です。そのほかにも、電子書籍という形態で商業界の既刊本を残せないかと、出版社「ディスカヴァー・トウェンティワン」にもご協力をいただきました。もちろん、力及ばず実現できなかった出版企画もあります。それについては、これからも忘れることなく自らの非力さを胸にとどめてまいります。

 

次にやったのが、自分自身の棚卸しです。

 

やれることは何か?
やりたいことは何か?
やるべきことは何か?

 

これら三つの「や」の重なる仕事が、先ごろ上梓した『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』のもととなる原稿を書くことでした。ときはコロナ渦中真っただ中。社会も自分自身も不透明な状況下、商業者創立者である倉本長治の思想を次代に伝えていくというミッションが私を支えてくれました。

 

 

プレジデント社のお力添えにより書籍となったとき、倉本長治の眠る箱根・早雲寺を訪ね、墓前に報告をしたのが今年の大切な思い出の一つです。いま、おかげさまで少なからず高評をいただくことができたことを報告に、そして今後の精進を誓いに訪ねようと思います。

 

一枚の写真から、そんなことを思いました。

 

振り返ると、最初に上梓した『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』もやはり当時、自分にやれること、やるべきこと、やりたいことに打ち込んでできた一冊でした。

 

 

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

「再出発の一葉の写真」への2件のフィードバック

  1. 素敵なお話をありがとうございます。自分も最初の会社の事を思い出しました。事業譲渡だったのですが、お取り組み先様を上司と回った最後の3日間、その後上司の奥様から伺った上司の想い、それが自分の原点です。また想い新たに日々を取り組む事ができます。繰り返しになりますが、素敵なお話をありがとうございます。

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