笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

仏様におまかせしよう

世界で初めて衣料品のセルフ販売を成し遂げたのは、大阪天神橋筋にあったわずか1坪半の店「ハトヤ」。その大業は1950年、戦前は教員として児童を育て、戦後に行商から身を興した西端行雄・春枝夫妻によって成し遂げられました。

 

その後、西端夫妻は志を共有する4社で「ニチイ」を設立。中小小売店が理念的結合によって団結した、極めて稀有な企業でした。西端春枝さんは新生ニチイで人事・教育の要職に就き、社風も企業文化も給与体系も異なる組織の人心を一つとすることに尽力されました。

 

そのとき彼女がその柱としたのは、商売の技術でも、ビジネスの知識でもありませんでした。浄土真宗大谷派の寺院の子として生まれた彼女が繰り返し伝えたのは仏の教えであり、人としての正しい生き方でした。

 

その一つに「三法印」があります。これは仏教の根本の理念を示す次の3つの教理です。

①諸行無常
②諸法無我
③涅槃寂静

 

こうした人智の及ばない世にあって、西端さんは次のように言います。「問題が問題ではない。対処する私が問題である」。つまり、目の前にある問題に対してどう対処するかで人生は決まると西端さんは説かれます。

 

私たちは生きる上で、さまざまな現実に向き合います。そのとき、それを拒み嘆くか、受け入れ向き合うか――後者こそ仏の教えだと教えてくれました。

 

商業界創立者、倉本長治はその著『商人と仏教』で、こう記しています。「自分が、これが正しいと信じた途を一途に貫き通せ。それより他にわが行く途なしと信じたら、評判など気にするな、人気取りの商策など取るに足らぬことだ」。

 

西端夫妻はまさにこうした商人でした。そして春枝さんが伝えてこられてきたのも、まさにこうした在り方なのではないでしょうか。

 

最近、私が最も大切にしてある言葉があります。この言葉が、西端さんの人格形成に多大な影響を与えた母校、大谷学園の校訓だと知ったのはつい最近のことでした。

 

朝に礼拝(あしたにらいはい)

夕に感謝(ゆうべにかんしゃ)

 

令和2年6月6日、慈願院釋尼妙春という法名でお呼びすることになりました。しかし、大正、昭和、平成、令和にわたって多くの人たちの心に大切なものを与え続けた彼女は、これからも私たちの心の中でお元気に生き続けてくださるでしょう。朝に礼拝、夕に感謝を忘れなければ、いつでも彼女は共にいてくださるのです。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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