商業者と編集者には多くの共通点がある。
これは私の日頃からの持論でもあります。良い仕入れ先(筆者)を見つけ出し、また良い素材(取材ネタ)を探し当て、調達や製造加工(原稿執筆や撮影・編集)して、売場(誌面)というスペースに陳列(台割作成)して、ようやくお客さま(読者)に、商品(書籍や雑誌)を提供できます。さらには、POP(記事タイトル)で商品の価値を伝えます。
どうですか? 商業者と編集者の営みはとてもよく似ていますね。
今回紹介する一冊『職業としての「編集者」』は、多くのヒット作を世に送り出し、ビジネス書というジャンルを確立したビジネス書編集者、片山一行さんによる編集者論。編集という仕事の本質、その適性から、良い本、売れるほんのつくり方までを詳細に明らかにしています。
「人にはそれぞれ個性がある。人生観、思想、知識などもある。こういったものを総動員して著者や装丁家、印刷所などに接していくのが、編集者の仕事だ。言い換えれば、これらすべてを総まとめした『人格』で著者や出版関係者と真っ向から立ち向かい、結果として『書物』という形に仕上げて読者に渡すのが、編集者という“職業”でもある。そしてその『書物』はいい本、売れる本であるべきなのだ」(4ページ)
素晴らしい商業者と出会ったとき、私もそこから編集に対する流儀や作法を学ぶことがよくあります。その店や商品、そして発言から、大きな示唆を受けることたびたびです。それほどまでに、商業者と編集者は多くの共通点を持っています。
逆もまた真なり、といいます。
素晴らしい編集者から、商業者は多くを学ぶことができるのではないか思うのです。
*編集者は“優しさ”を持ってほしい
*「読者と同じ目線に立つ」ということ
*編集者が持つべきコスト意識
これらは本書の見出しの一部ですが、ここに出てくる編集者を「商業者」、読者を「お客さま」と置き換えれば、どれも商業者にとって欠かせない要件になります。今後、商業はますますメディアとしての役割が求められ、商業者は編集者であり、ジャーナリストとしての能力が求められるようになります。その意味で、お奨めしたい一冊です。
そして、こう思います。
今日、いつも親しくさせていただいている二つの商工会議所から、会報誌が届きました。それぞれに、商工会議所会員の方々に役立つ情報を伝えたいという担当者の人柄と熱意が紙面から感じられ、思うことがあります。
全国の商工会議所の会報誌がもっともっと会員に役立ち、心を動かすようなものになれば、それぞれの地域の経済は活性化し、結果として日本が元気になるのではないか、と。今はまだ限られた商工会議所だけですが、雑誌編集の経験者として彼らに心得を伝えることも、私にできる重要な役割なのだと考えています。