街とそこで商う店はサードプレイスであるべき――これが長年の現場取材でたどり着いた私の結論。ましては、ほとんどの商品がインターネットで買える時代にあって、商品の売り買いだけならば街や店よりもはるかに便利です。しかし、人の暮らしは便利なだけでは満たされません。
サードプレイスとは、家庭(ファーストプレイス)と職場・学校(セカンドプレイス)と別にある心地の良い時間を過ごせる“第三の居場所”のこと。アメリカの都市社会学者、レイ・オルデンバーグが1989年に発表した著書『The Great Good Place』の中で提唱した概念であり、次のような特徴を持っています。
・無料あるいは安い
・食事や飲料が提供されている
・アクセスがしやすい、歩いていけるような場所
・習慣的に集まってくる
・フレンドリーで心地良い
・古い友人も新しい友人も見つかるようなところ
本書『街づくり×商業 リアルメリットを極める方法』は、長年にわたり数多くのショッピングセンターや駅ビル、新業態の開発に携わり、地域の特徴を生かしたサードプレイスを創造してきた著書による一冊。インターネットなどバーチャルにはないリアルのメリットを極める方法と実例です。
「人間にとって大切なことは、日々の生活のなかでリフレッシュする場所があること。そして人との出会いや会話である。こからは時間をかけて車で出かける大きなSCではなく、身近な場所でショッピングや飲食、休憩が日常の楽しみになる」(本書48ページ)
その成功条件として著者は、①常に地域社会の生活環境をしっかりとらえた業態開発、②地域貢献活動や祭事などの行事での役割、③地域経済効果としての雇用や地域仕入れなどを取り入れる、の3点を明記。そこには街と商業による共創という視座があります。
デジタル化が進むほど、感動や共感といった心の満足や体験価値を人間という生き物は求めるもの。ここには、それを実現するための手法と実践例が惜しげもなく展開されています。