たとえば、一枚のチラシやPOPを書くとき、SNSでお客様に呼びかけるとき、そこに必ずあるものが言葉です。自分の思いや考えを他者に伝えるために大切なもの、それが言葉です。そもそも、何のために商いをするのかを自分の心に刻み込み、あなたが選ばれたいお客様に伝える上でも言葉は欠かせません。
一方で多くの場合、自身の内面にある考えを言葉として的確に表現できずに、もどかしい思いをすることはありませんか。その表現が他者からの借り物であったり、ありきたりであったり、漠然としていたりすることはありませんか。
それは、あなたの中に「言葉の木」が育っていないから――「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発・駆使する川上徹也さんが、著書『1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる』で解き明かすのは、その「言葉の木」の育て方です。
大樹が空に向かって幹を伸ばし、枝葉を茂らせ、いくつもの花を開き、その後に実をつけるのは、地面の下にしっかりとした根を張っているから。豊かな実りをもたらす言葉も同様だと川上さんは言います。
言葉の種を植え、根を張り、幹を育て、枝葉を伸ばすための手法を、多くの人を動かす言葉を紡いできた著者がその創作の肝を明かしてくれています。そのために川上さんは3種類のノートを用いることを提唱しています。
一冊目が「日気ノート」。日気とは、日々の気づきを書き記すところから名づけられた著者の造語です。日々私たちは多くの情報に触れています。その中であなたの琴線にふれることをノートに書き留める。そして、それを折に触れて読み返して、さらに調べ、自分なりの解釈を書き加えていく。その営みが言葉の木の根を張るインプットになるのです。
二冊目が「内幹ノート」。これは言葉の木の幹であり、ドラッカーがいうところの「何によって憶えられたいのか?」という自身の軸であり哲学だと川上さんは言います。そのために自身の人生の過去を棚卸して現在を分析することで、誰でも“内”に必ず持つ強みを見出し、一行で表現するためのものです。
三冊目が「出言ノート」。出言という著者の造語のとおり、これまで一連の営みの成果としてアウトプットする言葉の枝葉をつくるためのノートです。その源泉は日気ノートによるインプットであり、内幹ノートによる打ち立てた自らの軸にあります。この両者があってこそ、人の心に残るオリジナリティある言葉が出てくると、自身の体験を交えながら教えてくれます。
結果、「人気」という花を咲かせ、営みの成果という実を生らし、種を遺します。このとき、種とは何でしょうか。
「種からは、また新しい木が育っていきます。植物の場合は同じ種類の木になり同じ花が咲きますが、言葉の木では、まったく同じ木になることはあり得ません。影響を受けながらも、違う種類となっていくはずです。作家、ミュージシャン、アーティストなども誰かの影響を受けながら、まったく別の木に育っていくのです。時には影響を受けた者より、より大輪の花を咲かせることも珍しくない。多くの種が木に成長していくと、やがて林になり、森になるかもしれない」(210ページ)
そう、種とは未来そのもの。言葉にはそうした力があります。商いにもその力が大切なのです。
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