笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

SHIBUYA109式Z世代マーケティング

「Z世代」という言葉をご存じでしょうか。

 

1990年半ばから2010年代に生まれた世代で、日本では全人口の約15%、世界では3人に1人を占めます。5年後、10年後には消費の中心的存在になる世代です。

 

そもそも特定の世代をアルファベットで表現するようになったのは、戦場写真家、ロバート・キャパが1953年に刊行したフォトエッセイ『Generation X』に由来すると言われています。第二次世界大戦直後に生まれたベビーブーマーの次の世代(1964年から1980年生まれ)をさし、「未知(X)」という意味を込めて「X世代(Generation X)」と名づけられました。

 

さて、Z世代。インターネットが大衆化した後に生まれた最初の世代であることから、「インターネット世代」ともいわれ、テクノロジーに対して苦痛や違和感はなく、社会的交流のためにソーシャルメディアを頻繁に使用します。「デジタル」が彼らの特徴を表すキーワードです。

 

また彼らはバブル崩壊後に生まれ、2008年の大不況(リーマンショック)の時期に成長期を過ごし、東日本大震災、熊本地震を体験してきたことから、社会は無秩序であるという感覚と精神的な不安感を持っています。もう一つのキーワードは「不安」です。

 

本書『SHIBUYA109式Z世代マーケティング』は、多くのZ世代が集う商業施設「SHIBUYA109」をフィールドに、5年間にわたり毎月200人、約1万人の「未来の消費者」の生の声をインタビューしてきた著者による一番リアルなZ世代論。親世代にあたるX世代、祖父母世代にあたるベビーブーマー世代(団塊の世代)に向けて、彼らの行動原理と消費価値観、そしてその根底にあるモチベーションを明確に解説してくれます。

 

本書では、Z世代の消費行動における価値観を4つに分類。表層的でうつろいやすいトレンドの土台にある消費価値観を解説してくれます。

 

体験消費

〈何かを体験することにお金と時間を費やす行動です。「物消費」に対して「コト消費」ともいわれます。Z世代はモノではなく、誰かと時間を共有する“コト”にお金をかける傾向にあります〉(89ページ)と著者は分析。「モノを買うときにはすでに彼らの頭の中に実現したい“理想の体験”のイメージができていて、その体験に必要なモノを買い揃え」(93ページ)る行動の一例を示しています。

 

失敗したくない消費

〈「失敗したくない」という意識のもとに行動する価値観です。買い物だけでなく、進路の選択やコミュニケーションの現場など、様々なシーンでこの考え方がついて回っている〉(105ページ)と著者は分析。そのモチベーションとして「限られた時間やお金を有効に使いたい」「周りに○○と思われたくない」という気持ちを挙げ、失敗しないために事前の情報収集に力を入れていると指摘しています。

 

メリハリ消費

〈「メリハリ」という言葉は監事にすれば「減り張り」(中略)物事の強弱や緩急をはっきりさせる様子を表します。「減り=メリ」に分類されるものに対しては、お金も時間もシビアに節約され、その分「張り=ハリ」に分類されるものには、お金や時間をかけることを惜しみません〉(124ページ)と著者は分析。象徴するキーワードとして「コストパフォーマンス(コスパ)とタイムパフォーマンス(タイパ)を、モチベーションとして「自己実現」と「効率」を挙げています。

 

応援消費

〈共感できる人やモノを応援することにお金や時間を費やすこと〉(136ページ)をさし、その要因として〈東日本大震災などの大きな自然災害を子供の頃に経験し、困ったときに助け合うことに大切さや、困っている他者に貢献したいという意欲が育まれたこと」「幼い頃からAKB48をはじめとしたアイドルが身近に存在し、誰かを「推す」文化が当たり前のように培われてきた〉と著者。そのモチベーションとして「貢献」「自己実現」「所属」を挙げています。

 

著者は「SHIBUYA109渋谷店」などを運営するSHIBUYA109 エンタテイメントのマーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」の所長。1万人という膨大なZ世代の生の声に寄り添い、同じ目線に立ってきた著者ならではの知見に富んだ一冊。

 

第4章ではこれからのマーケティングをキーワードとともに示唆し、第5章ではaround20との向き合い方を3つの“心得”として教えてくれます。その詳細については、ぜひ本書を参照することをお奨めします。X世代の私も、Z世代の次男の行動と気持ちに理解と共感が生まれました。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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