愛情、おもいやり、まごころ、誠実さ……。世の中で価値を認められているものの中には、金銭で買えないものがあります。金銭で買えないものだから、それに値段をつけることはできません。したがって、それを売る店もありません。
たしかに人間の精神より価値の高い商品はありません。しかし、金銭で買えない精神を、金銭で売買できる商品に添えて売ることはできます。牧師や僧侶といった宗教者は尊敬される存在ですが、精神しか取り扱いません。しかし、本当の商人とは精神と物質を共に扱える稀有な存在なのです。
ものを売ることは、その行為自体によって文化に貢献する営みです。人間の精神を高め、生活を喜ばしく楽しいものとします。社会から不安、不便、不幸、不満足といった“不”を取り除くことができます。そのために私たちは知識と技術、勇気と根気を養わなければなりません。
金銭は計算できますが、信用は金額では表せません。その関係は物質と精神の関係に似ています。精神と信用というお金では買えない価値をお客様は望んでいます。
その意味で、いまこそ商いは“感動創造業”という本来に立ち返るときを迎えています。誠実やおもいやりという徳に裏打ちされたものでなければ本物ではありません。難しくもやりがいある聖職なのです。