お客様は商人の上の存在でもなければ、下に見る存在でもありません。お客様は神様でも、攻略すべきターゲットでもありません。価格でおだてれば乗ってくると単純に考えてよい存在でもありません。
安いから買うのだという、お客様を軽蔑した考え方を徹底的に排除しましょう。大売り出しでお客様を並ばせるのを自慢するのもやめましょう。いままでマーケティングでは常識とされてきた商いの考え方を変えるときです。
安さとは何でしょうか。仕入れミスや商品計画の甘さで余った在庫を値引きして売ることではありません。そんなお買い得は売り手にとっての一方的な「得」にすぎません。まやかしの安さは、人の心を悲しく、貧しくさせるだけです。
本当の安さとは、感動と賛嘆とが生まれてくるものです。「お値打ち」を待ち望むお客様の心に納得と感動をもたらすものです。それを実現できるのは、魂をこめた仕入れと商品づくりだけです。そのために私たちは人生をかけて専門知識を身につける必要があります。
「安さ」に似た言葉に英語で「リーズナブル」があります。「道理にかなった」「手頃な」という意味を持ちます。日本語で言うなら「筋の通った」「適切な」というニュアンスです。安さとは、関わる誰もが幸せになれる価値を内包しているものなのです。
そこには、誰にもわかりやすい安さの理由が明らかになっていなければなりません。お買い得の理由が明らかになったとき、お客様は初めて商人の誠実を見いだします。すると、そこに本当の信頼が生まれるのです。本当の安さとは、単に値札の額に表れているものではないのです。