あるときレストランで、ピカソは居合わせた一人の女性客に絵を頼まれました。ナプキンに30秒ほどすらすらと描くと、1万ドルを請求したそうです。「描くのに30秒もかかっていないのに⁉」と驚く女性客に、ピカソは「いや、30年と30秒だ」と言いました。出典不明で真偽のほどはわかりませんが、修練の大切さと価値を表したエピソードとして知られています。
販売についても同様です。繁盛とは、お客様が何度もくりかえし買物に訪れることを言います。しかし、多くの店ではいつしかお客様が来なくなるのはなぜでしょうか。大抵の場合、そこにはお客様を落胆させる修練不足があります。
昨日より今日は、たとえわずかでも商品知識を向上させましょう。少しでもおいしさを高めましょう。その向上心の有無をお客様は見逃しません。なぜならそこにはお客様のためを思う良心があるからです。販売や製造技術の上手下手よりも、修練すべきはその点にあります。
ある寂れた商店へ、一人のお客様がやってきて、熱心に商品を探しだしました。彼は、望む商品を求めて何軒も店を回ってきたと言います。しかし、その店にもありませんでした。お客様のがっかりした様子を見て、商人はなんとか望みを叶えようと、問屋を訪ね、メーカーに問い合わせ、サンプルを仕入れては自分で試しました。
一人のお客様の満足のために、彼は寝食を忘れて商品を研究し続け、とうとう最適な商品と出会い、お客様を笑顔にすることができました。そのために費やした時間と経費に見合う利益は得られませんでしたが、彼はそれよりも大切なものを得たのです。
それは、一歩一歩を積み重ねた先にある商いの本質。お客様の心からの喜びこそ、商人の使命であり、店に繁盛をもたらすという事実です。今、彼の店は多くのお客様でにぎわっています。