「品揃えのヒントはすべてお客様の中にありました」
こう語るのは、広島県庄原市の書店「ウィー東城店」の店主、佐藤友則さん。同店は書籍・雑誌以外にも、文具、雑貨、化粧品、加工食品、ミュージックCD、タバコ、カフェコーナー、エステルーム、美容室、敷地内にはコインランドリー、精米機、卵の自販機が揃う、まさに「まちのよろず屋」。そんな店で佐藤さんは、お客様一人ひとりに目を配り、一人ひとりのお客様と親しく言葉を交わしています。
「一つひとつは点であっても、続けていけば線になり面に広がっていきます。そして、お客様の声を継続して蓄積し、仕分けしていけば、ニーズの本質と次のヒントは必ず見えてきます。それは地域のコミュニティとなることであり、本屋はその核になれる商売です。お客様が本当に望んでいらっしゃるのは“本”ではなく“本から広がる世界”。それを原点に据えれば、書店は地域の再構築に大きな可能性を持っています」
しかし、それを実践に移すのは簡単なことではありません。多くの書店では「利益に結びつかないから」と理由をつけて、事業として取り組むことに逡巡しています。
手がける事業はいずれも地域の暮らしに必要なものであり、かつ利益率の高いものばかり。トーハン発行『書店経営の実態』2019年度版によると、健全企業であっても経常利益率が1.08%にとどまる書店業界にあって、ウィー東城店は異彩を放っています。
こうした事業の根本にあるのは、佐藤さんの本屋であることの誇りと、地域の暮らしを守り彩ろうとする覚悟。そのチャレンジの奇跡については、ぜひ新著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』をご覧ください。ここでは最後に、同社の経営理念を佐藤さんに語ってもらいます。
「当社で代々受け継がれてきた経営理念『盥(たらい)の水』は、二宮尊徳翁が弟子に説いた話です。盥の水はかき集めようとすると逃げていきますが、向こうに押し出せばいつか手前に戻ってくるという水の動きの原理です。当社も戻ってくる水は求めず、これからもただひたすら水を押し出すことに専念する会社でありたいと思っています」