なぜ私はこの人物に惹かれるのだろうか? ある会合での彼の講演に耳を傾けながら、そんなことを考えていました。
志――ひと言でいうならこれに尽きるでしょう。そして、彼の志に賛同する仲間が全国にいることも知っています。私もその一人です。
彼とは松井洋一郎。全国で多くの事業者が実践する「まちゼミ」の伝道者です。先日は、鹿児島さつま町のまちゼミ結果検証会で時間を共にしました。
2003年に愛知・岡崎市で、10店舗の取り組みから始まったまちゼミが、いまや425地域、約2000商店街、約2万9000事業者が取り組むまでに成長してきた要因は何でしょうか。それが志です。
私が彼に初めて会ったのは今から5年前。私が「商業界」の編集者として、全国各地へ広がりつつあったまちゼミを本格的に取材したときのことでした。そのとき彼が語った言葉を今も憶えています。
「想いを持った仲間と前を向き、有益な事業を積み重ねていく中で、中心市街地や商店街の活性化は成し遂げられると確信しています」
その志を今も揺るがずに持ち続けていることを知っています。そして、その確信は着実に現実化しています。彼が各地に植えた志を受け継ぐ者たちが実践を重ね、自店を磨き、まちを共に考える仲間たちと動き始めています。
人口減少、少子高齢化、事業承継難、コロナ禍、そして原材料の値上げラッシュと、地域に根づいて商う者にとって過酷な変化が相次いでいることは事実です。しかし、私たちは負けない。そこに暮らしがあり、幸せを求める生活者がいるかぎり。
まちゼミには己を磨き、商いを強くし、仲間との絆を固くし、お客様と地域の暮らしに役立つポテンシャルがあります。まちゼミを目的とせず、まちゼミを手段としたとき、そのポテンシャルは発揮されるでしょう。