手許に一冊の古い本があります。タイトルは『キゝメのあるチラシの書き方』。商業界草創期の指導者の一人、新保民八によるものです。
「愛と真実」の商業指導者、新保民八は“広告の人”でもありました。花王石鹸の常務を務めるかたわら、商業界創立者、倉本長治の理念に共感、商業界初代主幹に就任します。一方で、電通、アサヒビール、協和発酵、ダイハツ、エーザイ、森永製菓など著名な会社の広告顧問を務めた人物です。
◎愛情と生気あふれる広告
私が新保を敬愛するのは、彼が優れた技術の伝道者だったからではありません。こうした人材ならば、これまでにも、そして今も掃いて捨てるほどいます。
次の文章は本書のあとがきとして書かれたものです。ここに新保の真骨頂があり、広告の真実があります。
〈いろいろなことを書いてきたが、私は最後にもう一度、広告を書く者の大切な心構えについて強く申し上げておきたい。それは、広告はすべて、それを書く人たちの愛情によってはじめて意味を持つということである。
商売そのものが、大衆への愛情によって成り立つものだということは、私の商業道徳の根本理念であるが、その商売の愛情を伝えるものは広告なのである。
「大衆がより幸福に、楽しい文化的な生活を送るために、私はこのように便利な商品、経済的な品物をお売りしています」ということを知らせるのが商店の広告であってみれば、愛情に根ざさぬ広告はあり得ないのである。
一人の消費者をまぶたの中に描いて、この一人の消費者の幸福になってくれる姿を想像する。この一人が自分の店のこの品によって、より楽しい生活を営む一つの場面を想像する。
すると、私たちはどうしてもその一人が幸せになるために、この商品を買わなければならないという熱情に似たものを感じてくる。その愛情から生まれる「知らせたい」という文案には、愛情と生気があふれている。
そうした広告にお客は動かされて、買う気になるのである。
愛情に国境はない。私たちは、知らせれば知らせるほど、より多くの幸福な大衆をつくるこができるという信念に、かくして到達することができよう。
大衆を幸福にする商売をしている以上、大衆を幸福にするあらゆることを、事細かに知らせたい、知らせることが商人の使命であるという信念にまで高められた“愛の手紙”が何よりも力強い。したがって、効果の高い広告を生むのである。〉(本書183ページ)
まさにチラシはラブレター、愛の手紙なのです。
◎「J-NOA新聞折込広告大賞2022」のご案内
このたび、一般社団法人日本新聞折込広告業協会では「J-NOA新聞折込広告大賞2022」と題して、折込広告が持つ媒体特性、機能を活用し、可能性を開拓した作品や媒体価値向上に貢献した作品を募集しています。
■募集テーマ:新聞折込広告の未来~わくわくするオリコミのある暮らし~
■応募作品大期間:2021年8月1日(日)から2022年7月31日(日)
※上記に日本国内の新聞に折込まれた「新聞折込広告」を募集します。
■応募締切:2022年7月31日(日)消印有効
詳細・応募は日本新聞折込広告業協会ホームページをご覧ください。
私も審査委員長として、応募作品の選考にあたらせていただきます。皆さまからの応募をお待ちしております。