今日は少し観念的なお話になりますが、ご容赦ください。
商売は現実の営みですが、現実だけでは本当の商売は成り立ちません。理念のないところに本当の商売は成り立たない――いつの時代にあってもこの真理は変わりません。良い店、悪い店の区別は、その店が非情に基づくのか、愛情ゆたかであるか、そのどちらかで問われるからです。
お客様への愛があれば真実があります。真実のあるところに誠意があふれ、誠意があればその店は信頼できます。とはいえ誠実な商人にも、知恵や行動力が不十分な場合もあります。
だからといって、商人の精いっぱいの努力が愛情にもとづいて行われるとき、それが報いられないことはありません。それは人間の情というものは必ず双方向なものだからです。
しばしば商人はお客様を見るのではなく、同じ商人ばかりを見ることがあります。例えば、隣の店が繁昌していれば、腹が立つことはありませんか。うらやむことは当たり前の人間の感情です。
しかし、相手をうらやんでも、自分の目的は実現します。希望に向かって歩まない以上、自分の目的は実現しません。何のために自分が商うのか――ここがずれていては、いくら励んでも“仕合わせ”訪れません。
あなたが向き合うべき相手は誰か。近くの競合店ですか? いいえ、違う。あなたが、あなたの持ちうるもので幸をもたらす対象、お客様にほかなりません。