笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

素人は戦略を語り、

プロは●●を語る。

 

これは、ある軍人が戦争に勝つ要諦を言い表した言葉ですが、●●にはどんな言葉が入るでしょうか。戦争に限らず、経済にとっても彼の指摘は重要性を増しています。

 

ある人物とは、第二次世界大戦中に北アフリカやヨーロッパでアメリカ陸軍を率いた野戦司令官、オマール・ブラッドレー。「勇気とは、恐ろしくて半分死にそうになっている時でさえ、その場に必要な行動が取れる能力である」という言葉も遺しています。

 

さて、正解は「兵站」。ビジネスにおいては「ロジスティクス」です。

 

サプライチェーンプロセスの一部であり、顧客の要求を満たすため、発生地点から消費地点までの効率的・発展的な「もの」の流れと保管、サービス、および関連する情報を計画、実施、およびコントロールする過程を言います。物流においては、生産地から消費地までの全体最適化を図る営みです。

 

すでにお気づきの人も多いと思いますが、じつは最近、物流コストが上昇しています。日本銀行「企業向けサービス価格指数」によると、道路貨物輸送サービス価格は、2010年代後半にバブル期の水準を超え、過去最高のインフレを更新中。

 

 

特に、宅配便の価格急騰が顕著です。インターネット通販の需要拡大によって宅配便が急増する一方で、多品種・小ロット輸送の増加によってトラックの積載効率が低下し続けています。

 

輸送の担い手であるトラックドライバーに目を向けると、従事者数は1995年をピークに減少を続けており、しかも平均年齢は上昇を続けています。しかも、年収は全産業平均以下の水準にとどまっています。こうしたことから2027年には24万人(需要分の25%)が不足し、2030には物流需要の約36%が運べなくなると日本ロジスティクス協会は試算しています。

 

加えて「物流の2024年問題」。トラックドライバーの労働時間は長く、労働環境を改善する必要性から、2024年度以降、時間外労働の上限(年960時間)規制が適用されます。結果、物流コストはさらに高騰する恐れがあります。

 

このような物流コストインフレの構造を放置した場合、2030年時点で7.5兆円から10.2兆円の経済損失が発生する可能性があると経済産業省。物流コストインフレ時代には、物流の能力が産業競争力を左右するようになると指摘し、企業は物流も統合したサプライチェーン・マネジメントを確立すべく、デジタル技術をフル活用し、経営を変革すべきと提言しています。

 

素人は戦略を語り、

プロは兵站を語る。

 

いま、まさにこの言葉が喫緊の課題となって迫っています。あなたの商いにおいても、その対策が早すぎることはありません。キーワードは部分最適ではなく、全体最適。つまり、利己ではなく、利他であることが求められています。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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