19世紀後半、ポスト印象派を代表する画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。現在、その世界最大の個人収集家であるヘレーネ・クレラー=ミュラーが収集した作品の特別展が各都市を巡回しています。
ゴッホは約10年という長くはない創作期間に、油画、水彩画、素描、版画などを合わせると2000点以上の作品を遺したと言われます。けれども、生前に売れたのはたった一枚でした。
ゴッホは筆まめでもあり、弟テオや家族・友人らと交わした多くの手紙が書簡集にまとめられています。そこから拾った印象的な文章をいくつか紹介します。
「偉業は一時的な衝動でなされるものではなく、小さなことの積み重ねによって成し遂げられる」
彼の圧倒的な画量を思うと、「積み重ね」という言葉の重みを感じずにはいられません。またゴッホはこうも遺しています。
「私はいつも、まだ自分ができないことをする。そのやり方を学ぶために」
たしかにゴッホほど画風が変わった画家もいません。ミレーに傾倒して農村の風俗を描いた初期に始まって、印象派と浮世絵の影響を受けたパリ時代、対比する補色を多用したアルル時代、そして短い棒線と渦の筆使いが際立つサン=レミ時代と、ゴッホは貪欲に学び続けました。
小さなことを積み重ね、学び続けることの大切さ、ゴッホの絵はそんなことを教えてくれます。生前に売れたのはたった一枚。しかし、彼は学び、挑戦することをやめませんでした。彼の絵が今も多くの鑑賞者を集めるのは、そうした彼の生きかたにあるように思います。