夢のある人には希望がある
希望のある人には目標がある
目標のある人には計画がある
計画のある人には行動がある
行動のある人には実績がある
実績のある人には反省がある
反省のある人には進歩がある
進歩のある人には夢がある
流通評論家、故・吉田貞雄さんの詩「夢」を冒頭で紹介したのには理由があります。今日の一冊、『好奇心を“天職”に変える空想教室』の著者、植松努さんはまさにこの詩を実践する生き方をされている人物だからです。
北海道赤平町。かつて炭鉱の町としてにぎわい、廃坑後は人口が6分の1にまで激減した町に、植松さんが代表取締役を務める植松電機はあります。石炭を掘るときに使用する特殊な機械を製造していた植松さんの父は、廃坑後は自動車の部品修理を生業にしました。
やがて自動車は部品が壊れると、中古車から外した部品と丸ごと取り替えるようになり、その仕事もなくなりました。しかし植松さんは、父とともにリサイクル業で使用するマグネットをつくり特許を取得、いまや日本にとどまらず世界で使われています。
さらには少年の頃からの夢であったロケットを飛ばし、人工衛星を打ち上げています。世界で3機しかない無重力再現実験装置を持ち、赤平の工場にはJAXAやNASAの技術者が集います。人口1万人少しの赤平町に、年間1万人の学生が見学にやってくるのです。
そんな植松さんは、幼いころからこれまで周囲の「どうせ無理」という言葉と戦ってきました。中学生のときの進路相談で「飛行機とかロケットの仕事がしたい」というと、「じゃあ、東大に行かなきゃ無理だわ。でもお前の成績では、どうせ無理だから」と言われたそうです。
その彼を支えたのが、母が教えてくれた「思いは招く」という言葉でした。夢があったら何でもできるという母の言葉を胸に、植松少年は挑戦を続けたのです。
「人は誰でもいやなことに出合います。そのときはチャンスです。我慢をしたり、投げ出したり、愚痴をいったり、あきらめたりしている場合ではありません。いやなことに出合ったら、『なんでいやだと思うのかな?』と考えます。それが、人を助ける発明のきっかけになります」(139ページ)
商いも同じです。不満、不便、不快、不信、不都合、不利など、そうした「不」を克服していくことこそ、商人の使命なのです。「どうせ無理」という言葉から最も遠い商人になりましょう。