商人は商売を通じて、世の中の人に喜び、安らかさ、あたたかみ、なごやかさ、豊かさなどを生み出すことができる存在です。だから、単にお金が儲かったとか、商品が多く売れたとか、お客が多かったというだけでは、商売の目的が達せられたわけではありません。
もっとも、たくさんの売上げがあったり、たくさんのお客があったということは、それだけ人々に信じられ、喜ばれたことの証拠です。ですから、それは喜ぶべき、満足すべきことですが、単にたくさんのお客が来た、うんと売れた、そして儲かったということ自体には、商人の心からの幸福はありません。
そういう現象が、自分の仕事が世の中の人のための善意と努力の結果において生まれたのだという自覚があってはじめて、商人は幸福でありうるのです。つまり、「心」の在り方が大切です。千客万来に商人の幸福があるのではなく、それを生み出すために払われた商人の善意にこそ喜びがあり、張り合いがあり、幸福があるのです。