笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

最近の世相から、二つの絵画を思い出しました。歴史は繰り返すというか、人間のやることは変わらないというか、現在は過去の映し鏡のようです。

 

一枚目は、ピーテル・ブリューゲルの「死者の勝利」。ブリューゲルは16世紀に活躍したフランドル地方出身の画家で、「謝肉祭と四旬節の喧嘩」「農民の婚宴」「バベルの塔」など緻密な描き込みと風刺に富んだ作風で知られています。

 

「死者の勝利」は14世紀中ごろヨーロッパ全土を席巻したペストの大流行が題材です。骸骨の姿をした“死”があらゆる階級の生者へと襲いかかり、容赦なく蹂躙する様子を描いて、人間の無力さと愚かさ、世俗の権威の無意味さを観る者に語りかけています。

 

 

二枚目は、ニューヨーク出身の19世紀の画家、トンプキンス・ハリソン・マッテソンの「魔女審査」。裸にした女の体にあるしみや汚れを、魔女狩り人たちが「悪魔の刻印」に仕立て上げ、火あぶり刑にかけようとしている様子を描いています。

 

中世ヨーロッパを襲った相次ぐ戦争や飢饉、疫病は、無知による社会不安を増長させました。それが集団ヒステリー現象を生み出し、異端審問や魔女狩りへとつながっていったのです。

 

新型コロナウイルス感染症拡大が引き起こす様々な現象に触れるたびに、二つの絵画を思い出します。デマや過剰なマスコミ報道が社会不安を増長させてはいないか? 一部の業界や企業を、魔女を火あぶりにするように吊るし上げてはいないか? 火事場泥棒がごとく、この危機に乗じて悪行に手を染める者はいないか?

 

二つの絵画から、そうした人間の愚かさ、災厄に翻弄される人間の無力さを学べれば、少しでもそこから離れることができるかもしれません。絵にはそんな力もあるのです。負けてはなりません。私たちは今、試されているのです。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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