小売業の歴史とは、変化対応、顧客ニーズ追求の歩みです。新しい技術を取り入れ、自らの形を変えてきました。
9月2日、東京・渋谷に開業した「CHOOSEBASE SHIBUYA」はそうした革新の先兵。最も古い業態である百貨店を営むそごう・西武によって開発された、D2Cブランドを集めたメディア型OMOストアというべき業態です。
D2Cとは、Direct to Consumerの略語。製造者がダイレクトに消費者と取引をするビジネス形態。その特徴は、メーカーなどの製造者が自社ECサイトで商品を消費者に直接販売するため、販売業者を介しません。2000年後半頃から、このD2Cを採用する企業が増えてきました。
OMOとは、Online Merges with Offlineの略語。オンラインとオフラインの融合を意味します。要はインターネット通販(EC)と実店舗の垣根をなくし、消費者の購買意欲を促す施策のこと。商品やサービスに実際に触れることで得られる顧客体験を最大化させる目的があります。
つまり、そごう・西武はこれまでの実店舗、販売業者という自らの事業形態を超えて、新しいチャレンジをしているのです。革新は自己否定から始めるべきという、厳しい自己認識がそこにあるのでしょう。
ストアコンセプトに、ミレニアム世代やZ世代に関心が高い社会課題を設定。半年ごとに注目すべき編集テーマを設け、共感するブランドをパートナーとして、更新され続ける実験的な店舗づくりに挑戦するとのこと。
店頭・EC・メディアを横断して、つねに新しい出会いと学びのある購買体験を提供。「モノを買う」のではなく、「気づき」「賛同」「応援」を入り口に「意味に出会い、意志を買う」という次世代の店舗のあり方を提案しています。
店舗は十字路で区切られた4つのエリアで構成され、それぞれに異なった体験を提供。2つある展示室では、D2Cブランドを中心に、51ブランドの商品が揃います。商品の購入は、展示品をスマホ上のお買い物バッグへ追加し、それをカウンターに掲示することで決済。ショールーミングストアとは違い、全商品が持ち帰りに対応しています。
「サステナビリティ」を切り口に編集されているブランドの商品、展示室に施される空間演出を通じて「私たちの未来」を考えるきっかけを提供したいという思いが込められています。ストアコンセプトは次のようなものです。
意味に出合い、意志を買う。
まだまだ知るべき世界、変えていくべき課題が山積みな時代。
社会の分岐点に立っている今、わたしたちは一体どんな未来を描いていくのだろう。
意味に出合い、意志を買う。
ひとつひとつの選択が、わたしたちの未来をつくる。
ここは、未来への選択肢を届けるストア。
この大きな十字路を通って、未来への選択を選んでいこう。
自らの手で。
ここ、渋谷から。
もちろん、商いとは未来を良くするためのものです。新しい技術をふんだんに取り込んだ新業態の掲げるテーマに注目していきたいと思います。