生前には一枚しか絵が売れなかったゴッホ。画家として太く短く生き、油絵およそ860点、素描1000点以上を遺しています。彼ほど画風を変えた画家も少なくありません。
まず農村生活を静謐な筆致で描いたハーグ派の“形”です。ゴッホは画家としての基礎を、モティーフに対する真摯な取り組みの姿勢を学びます。ジャポニズムに憧れ浮世絵を描いたりと、彼ほど模倣から学んだ画家もいません。
その後パリに出て「印象派」と出会い、躍動する色彩の虜となりました。ポスト印象派の画家たちとともに制作に打ち込み、その作風を取り入れていきます。特に原色を対比させた明るい色遣いと、筆触の跡をはっきりと残す描き方は、その後の画風を決定的に方向づけました。
しかし彼は、ハーグ派や印象派という技術を単に受け入れただけではありません。模倣を通じて新たな技術を身につけることで彼はオリジナリティを創造しました。自身の中でうごめいていた絵画に対する思いを創造していったのです。
模倣から始まり、模倣を超えて創造へと向かう営みはたやすいものではありません。事実、ゴッホはその激しい営みに己の命を捧げました。しかし、それは彼にとって生きる喜びでもあったはずです。
事実、彼は10年ほどという長くない画家としての人生のうち、最初の3年間をひたすら素描(デッサン)にのみ取り組み、形を写し取り、技術習得に充てました。「素描は種蒔き、油絵は収穫」とは彼が弟テオに宛てた手紙に残る言葉です。
「創意を尊びつつ良い事は真似よ」とは、商業界創立者、倉本長治が提唱した商人のための行動訓「商売十訓」のひとつです。オリジナリティはそこからしか生まれません。
【今日の商う言葉】
小さなことでもよい
初めは物真似でもよい
実践なくして
成就することは何もない