自分の商売を考えるときいちばん大切なのは、「自分が客だったら」という視点に立つこと。当たり前かもしれませんが、その実践はとても難しいものです。人は誰しも自分の都合を優先してしまうからです。
商売とは、世の人々のために幸福と平安の社会を、商品・サービスを提供することを通じて招来することにほかなりません。人間が社会のために働いて報酬を稼ぐのが愉しいことだと感じ、生きている嬉しさ、働いた幸せがほのぼのと身にも心にも感得できる場所、それが店であるはずです。
そんな商いをすることが、良き人として生きるということ。つまり、良い商人は良い人間であるはずです。
いえ、こう書くと堅苦しさが先に立ちます。良く生きようとする、これに尽きます。そんな店を営んでいくためには、販促も計数もマーチャンダイジングも大切です。
でも、それよりも大切なものがあることを、いつも忘れないようにしましょう。
たとえば、写真のみかん。お弁当に入れるために半分に切られていますが、それだけではありません。底を削ぎ、側面には二方向から切り込みが入れられています。半分切っただけより、工程数は増えます。
でも、こうしたほうがお客様はみかんを剝きやすく、食べやすいことは一目瞭然。この店は多くのお年寄りに利用されています。手の力の落ちたお年寄りにとって、このひと手間がどれだけありがたいことかが創造できるか、できないか。
お客様の立場に立つとはこういうことです。