笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

長期間にわたるコロナ禍で、多くの商業が傷んでいます。とはいっても、その傷み具合には濃淡があり、いちばん影響を受けているのは、休業を余儀なくされる飲食店でしょう。

 

このとき、「自分のところはそれほど影響を受けずに助かった」と安堵するのか? 「自分の店も決して良くないから、他の店のことなんて気にしていられない」と考えるのか? どちらでもなく、「自分にできることで他の店を応援したい」と考え、実行した商人がいます。

 

 

コロナってやつは、ほんまにえらい厄介なもんで。

あれもできない、これもできない。

気軽に美味いもんすら食べに行けない。

みんな誰しもが大変な世の中ですが、

ご存知、その中でも飲食店は特にです。

 

こうした文言から始まるチラシの発案者は、京都市左京区でスーパーマーケット「フレンドフーズ」を営む藤田俊さん。普段は広告費の予算も取らず、チラシも打たない同店ですが、7月30日から8日間連続で京都新聞に、地元飲食店応援の折込チラシを打ちました。

 

 

「予算のほとんどはコロナバブルがあるスーパーとしてフレンドフーズが持ち、当店に商品を収めてくれている飲食店7店分のイメージ広告を1日1店舗分ずつ出していきます。“食を通じて地域に幸せと感動を届ける”という意味でスーパーも飲食店も同志だと考えました」と藤田さんは、企画の主旨を語ります。

7月31日から7日間連続で登場するのは、京都の “ほんまもん” 飲食店7店

・7/31 (土):フレンチレストラン「Eventail」

・8/1 (日):焼肉屋「京都焼肉 北山」

・8/2 (月):喫茶「甘党茶屋 梅園」

・8/3 (火):うどん屋「名代おめん」

・8/4 (水):洋食屋「グリルにんじん」

・8/5 (木):イタリアンレストラン「ダニエルズ」

・8/6 (金):喫茶「丸久小山園 西洞院店」

 

 

“京都のほんまもん”を揃えるフレンドフーズでは、以前より積極的に地元の飲食店が手がける商品を取り扱ってきました。加えて2020年のコロナ禍には新たに飲食店のお弁当を販売開始。さらには廃業しようとしていた老舗惣菜店の味を継承するなど、さまざまな取り組みによって京都のほんまもんを守ってきました。。

そして今回、いまだ終わりが見えないこの状況を少しでも元気づけるため、各店の物語や、各店がつくるお奨めの商品、またフレンドフーズがその店の商品を仕入れる理由を紹介するという内容の連合チラシを発行したのです。併せて期間中、フレンドフーズ店頭で「ほんまもんの飲食店フェア」と名づけ、今回の参加飲食店の商品を集めたフェアを開催しています。

 

「本来は直接飲食店へ食事に訪れていただきたいものの、コロナ禍のさまざまな事情でお店に行くのが難しい方もいらっしゃるはず。そんな方でも各店の味や底力に触れられるきっかけをつくるため、フレンドフーズでは引き続き京都の飲食店の商品を販売してまいります」

 

 

「損得より先に善悪を考えよう」とは、商業界創立者、倉本長治の遺した商人訓「商売十訓」の第一項。藤田さんの取り組みはまさに利他の心から始まった善意の行いです。こうした取り組みを心あるお客様はきちんと見ています。

 

「パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ“他者のために生きる”という人間の本質に立ち返らなければならい」とは、フランスの経済学者、ジャック・アタリ氏。2020年春先、コロナが世界に広がる中、パンデミックを乗り越えるために最も重要なこととして「利他」の精神を挙げました。

 

できることでいいのです。あなたができる利他を今こそ発動させるときです。藤田さんの実践はそれを教えてくれます。フレンドフーズはスーパーマーケットの形をした真実発信メディアです——これは同店のホームページにある言葉です。まさにそのとおりだと共感します。そして、すべての店がそうあるべきでしょう。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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