マネジメントの父、ピーター・F・ドラッカーによる「経営者に贈る5つの質問」。「この問いを怠るとき、事業の急速な衰退がやって来る」とドラッカーは言いました。
【第1の質問】私たちの使命(ミッション)は何か
【第2の質問】私たちの顧客は誰か
【第3の質問】顧客にとっての価値は何か
【第4の質問】私たちの成果は何か
【第5の質問】私たちの計画は何か
これら5つの質問は経営者だけに向けられたものではありません。働く上で、そして生きる上で欠かせないすべての人たちが自分に問いかけるべき質問です。ここでは、顧客について考えてみましょう。
誰を顧客にするかで事業が決まる
あらゆる人とあらゆることを約束することはできません。しかし、特定のことを特定の人に約束することはできます。ここで言う特定のことが「事業」にあたり、特定の人が「顧客」にあたります。
「我々の顧客は誰か?」とは、自分たちの事業は、具体的に誰に向けられたものなのかを明らかにする取り組みです。ドラッカーはこう言っています。
我々の事業を知るための第一歩は、
「顧客は誰か?」という問いを発することである。
現実の顧客は誰か、潜在的な顧客は誰か、
顧客はどこにいるのか、顧客はいかに買うか、
顧客はいかに到達するか、を問うことである。
事業を決めるのはお客様です。事業とは「お客様に喜んでいただくこと」であり、どのようなお客様をお客様とするかによって事業が決まります。
お客様を明確にすればするほど、事業の成功確率は高くなります。お客様を明確にすればするほど、何をやるべきで何をやるべきでないのかが明らかになるからです。お客様を明確にすることによって事業提供側のやるべきことが決まってきます。
あらゆる角度から顧客を考える
あなたには、生涯にわたってお付き合いしたいと願う“理想のお客様”はいますか。下記の例のように、様々な角度から理想とするお客様を明確にしていってください。
どんな仕事をされている方か?(職業)
何に困っている方か?(問題)
何を達成しようとされている方か?(目標)
どんな役職の方か(役職)
どんな職種の方か(業種)
男性か、女性か?(性別)
どんな年齢層の方か?(年齢)
どんな家族構成の方か?(家族)
どこに住んでいる方か?(住居)
どんな趣味を持った方か?(趣味)
どんな学歴の方か?(学歴)
これを「ペルソナ」と言いますが、実在するお客様のほうが良いことは決まっています。「あの人のために」という熱量が高ければ高いほど、その熱は他のお客様にも伝わっていきます。
経営者には二人のお客様がいる
経営者にはもう一人、忘れてはいけない大切なお客様がいます。それは、社員の皆さんです。彼らは事業目的に共感し、その事業を成功させる大事な協力者です。
どんなに優れた人であっても、一人でできることはおのずと限界があります。協力者がいるからこそ、事業を進めていくことができ、喜んでもらえる人を増やしていくことができるのです。
仮に、従業員が事業目的に共感もせず、仕事に価値を感じていなければ、事業は価値あるものになりません。そこに社員の共感がない限り自発性も創意工夫も生まれず、優れた仕事にはなりません。
会社には、このように二種類のお客様がいることがおわかりいただけたと思います。一人は、会社の外にいて商品やサービスを使ってくれる人です。もう一人は、会社の中にて会社の仕事をしてくれる人です。
会社は、二種類のお客様がいなければ成り立ちません。従業員とは、店を裏側まで知り尽くす最も大切なお客様のことであるを忘れてはなりません。
では、あらためて質問します。
あなたが大切にしたい二人のお客様はどんな人でしょうか?