「本当の商人には文化性があるべきだと思う」
商業界創立者、倉本長治は商売を金儲けの方便とは見ていませんでした。商売は、世の中の人々に役立つためにしているのであり、人間の生活や文化を豊かな楽しいものとするために行うものと説いていました(商業界1952年9月号「新商道観」)。
倉本が遺した冒頭の一文には、こうした信念が脈々と流れています。70年近くも前に書かれた倉本のメッセージを以下に紹介しましょう。
お客様に、楽しさやうれしさ、喜ばしさを「商品」に添えて販売しよう。
しかも、その「喜ばしさ」は、永遠に伝わるような喜びでありたい。明日に色褪せるような喜びでないようにしたい。
そこに商売の永遠なる繁栄がある。
「ああ、この品はあの店で買ったのだ!」という楽しかった思い出が、その商品があらんかぎりお客の身と心に染み込んでいるくらいの商売がしたいものである。
商品は消費し、消滅することが多いけれど、楽しい思い出やそのときの嬉しさは、一生の間、人間の心のどこかにあるものである。
この永遠に残るものが尊いとされている。価値は物質より精神のほうが高いと言われるのはそのせいだろう。
商人も、この精神を物質に添えて売る者であるという誇りを忘れてはいけない。
いかがでしょうか。私たちは、この言葉を当たり前のものとして実践する文化性を身につけているでしょうか。良き商人とは良き人間のこと、これが倉本の教えです。